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「俺は、復讐をしたんです。人生をメチャクチャにした奴らに」
九路がそう言うと同時に、松雪は水晶に手を置いた。見えてくるのはどこかの学校の風景だ。
「俺、イジメられてたんですよね」
この人もかと、小田を思い出しながら思う松雪。だが九路は相変わらずの笑顔だ。
「小中とイジメられてました。最初は一人から始まって、それが三人になり、クラス中からです」
「それは……、お気の毒でしたね」
松雪の相槌を待ってか待たずか、九路は話し続ける。
「給食にゴミ入れられたり、殴られたりコンパスで刺されたり、ボールをぶつけられたり、石を投げられたり。担任も見て見ぬふり、味方なんて誰も居ませんでした」
指で数えながら重い話を九路が言う。
「クソ親父も『いじめられてる方が悪い』っつって、相手にしてくれませんでした。だから親にも黙ってたらどんどんエスカレートしていきました」
胸糞悪い話だなと松雪は思ったが、当の本人は平気な顔をして話が止まらなかった。
「彼奴等のお陰で、学校では勉強どころじゃなくて成績も悪くて、高校は皆が滑り止めにしている所しか受かりませんでした。イジメていた奴らはそこそこいい学校や、いい学校にいきましたよ」
「酷い話です」
松雪は次から次来る話に、短く返事をするのが精一杯だった。
「俺は人生をメチャクチャにされて、アイツ等はいい人生の一歩を踏み出していたんですよ。俺は高校でこそイジメられなかったけど、イジメがトラウマで人が怖くなってしまいました」
一つ間を置いて、九路は言う。
「イジメって、イジメているその瞬間だけでなく、一生残るものなんです」
「あの、それは少し分かります。俺もイジメられてたので……」
松雪が言うと九路は目を丸くして言った。
「そうなんですか! それじゃ話は早いですね!」
何だか嬉しそうなのが不気味だった。
「あと俺、思うんです。人は人に悪さをしたら必ず報いを受けるなんて嘘っぱち言う奴が居ますけど、上手く立ち回ってる奴らになんて報いは来ないんだって」
「どういう事ですか?」
「俺をイジメていたやつ、二人は大学出て、そして三人とも今は家庭持ってやがりましたよ。子供までいる奴も居ました。俺なんて底辺バイトしか出来ないのに」
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