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松雪は何も言えなくなってしまった。人にしたことの報いは必ず自分に来るとはよく聞くが、確かに上手く立ち回ってる奴らには来ないのかもしれない。
皆、薄々感じているが、それが真実だとしたら恐いので、胸糞が悪いので、言わないだけなのではないかと。
小学生だった九路は、鳩小屋でいじめられている鳩にいつしか自分を重ねて見ていた。
最初はホウキの柄でイジメている鳩を追い払う程度だったが、毎回見ていくごとに、イジメが酷くなる程に、見ていられなくなった。
殴られて蹴られたある日、九路はイジメをしている鳩にイジメの主犯格が重なって見えた。この世の全ての悪に見えた。
「いい加減にしろよ……お前っ」
九路はイジメに夢中になっている鳩を思い切り柄で殴りつけた。バサバサと羽ばたきながら落ちる鳩。
興奮していたので、最初は何が起きたのか分からなかった。だが、最初に来たのは恐怖だった。
大きな生き物を叩いてしまったこと。それへの恐怖。
鳩は地面でバタバタともがいている。九路は鳩小屋から飛び出た。
先生から怒られるんじゃないかと不安だったが、どうやら鳩は自分でどこかにぶつかったという事になったらしい。
羽を痛めて地面を歩き回ることしか出来なくなった鳩。イジメられていた鳩は木の枝に止まり、もう突かれることはない。
九路は、思った。ざまぁみろと、同時に自分が神にでもなった様な気分であった。
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