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イジメていた鳩を叩き落とした記憶を追体験した松雪に、九路が話しかける。
「俺は思ったんです。報いが無いなら、神も居ないなら、俺が罰を与えなければならないと」
九路は高校を出て、就職したが、すぐに辞めてしまった。イジメのトラウマで、注意を受けたり、少しでも大きな声を出されるとすくみ上がってしまう事が原因だった。
それから九路は自殺も考えたが、ネットの動画で興味を持ったパチンコ・スロットのプロ。いわゆるパチプロになろうと考えた。
理由は、生活を縛られることもなく、人と関わることも無いという事だった。
仕事をしていた時に溜めていた三十万円を軍資金に、必死に勉強した通りにパチンコ店で立ち回る。
九路に向いていたのか半年もすると一ヶ月辺り、三から五十万円を稼げるようになる。
そして、同世代や稼げない上の世代を見下し始めた。気持ちが良かった。小学生の鳩の一件以来だ、自分が神にでもなったような気分は。
九路は変わった、金遣いは荒くなり、パチンコ屋やSNS経由で少しガラの悪い連中とも付き合い始めるようになった。自分は何も変わらないのに自分が強くなった気分だった。
しばらくは幸せだった。金は湧いてくるようにあるし、同世代よりは圧倒的にいい暮らしをしている。そんな生活を五年続け、ふと、ある時全てが虚しくなってしまった。
自分の思い描いていた夢は、パソコンをカッコよく使いこなすエンジニア。それなのに今、自分は賭け事以外何のスキルも得られない生活をしている。
毎日パチンコ屋に通い、台を奪い合い、素性も知らない相手を憎み、憎まれ、夢とは程遠い場所にいる。
自分の人生はどこで狂ってしまったのだろうか、そう思い返すと絶対に小中学校のイジメだ。
九路には楽しい思い出なんかない。あるのはクラス中から馬鹿にされ、殴られ、キモいと言われ、地獄の小中学校の思い出だ。
あぁ、自分の人生は失敗していた。あの時点で失敗していたんだ。いくら金を持っても、それじゃダメなんだ。
そう思った瞬間、九路はふと、死ぬことを決めた。
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