《新キャラ》

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《新キャラ》

 今日の夢見は最悪であった。昨日、興味本位で見てしまった類人猿の大出血解体ショーで骸骨(がいこつ)たちが自分に襲い掛かる悪夢を見てしまった。 「はっ! はぁ……はぁ……、あぁ、怖かったぁ……」  冷や汗が背筋を通って気持ちの悪い思いをしたルゥは、向かい側で眠っているライに気づかれないようにガザガザな布を持って川へ馳せ参じた。  ザァーザァーと流れる川の浅瀬で水を浴びて長い金色の髪も洗う。濡れた髪も全身もがさついた布で拭いてから自身の風の力を応用してドライヤー代わりにした。  一瞬、誰かの視線を感じ振り向いた。――誰も居なかった。 「なんだろう……、気のせいかな?」  パキパキな布を自前の石鹸で洗って風で乾かした。まだ、がさついているものの良い香りがしたので満足する。  先ほどの寝床に戻ればライはおらず、代わりに昨日の残っていたステーキが串刺しで焼かれていた。一瞬、今日見た夢を想起し青ざめていたが下駄をカラカラと鳴らしたライが手になにかを抱えて帰ってきた。 「よぉ、先に起きていたんだな」 「う、うん。水浴びしていたんだ」 「ふ~ん。まぁそんなことよりも――これ食え」 「えっ?」  出されたのはリンゴのような果実やぶどうのようなものであった。驚愕しているルゥにライは頭を掻きながら「食いたくなかったら食わなくていいぞ」そう言って串刺しで焼かれている類人猿のステーキにかぶりついた。  頬をリスのように膨らませ、食欲旺盛なライにルゥは羽を震わせた。 「ふふっ、ライって優しいね。さすがはミキの愛弟子だ」 「……なんであのクソ野郎の話になる。ったく、食わねぇなら食っちまうぞ」 「食べるよ~、もう!」  青リンゴをかじりつき美味しそうに食していくルゥとステーキを食べていくライではあったが、――草むらがざわついた。  ライが鞘から短刀を抜き出し、ルゥがリンゴを食すのをやめて手のひらに息吹を吹き込む。  だが出てきたのは―― 「こんちはっ! あんたら強いんだねっ!」  190センチはあろう高身長で茶髪の青年がにこやかに微笑んで現れたのだ。だがライは短刀に力を入れている。 「お前は何者だ? 俺らになんの用事だ?」 「あー、そんなに警戒しないでよ~。俺、あんたたちの弟子になりたいんだ」 「……はあ?」  一気に力が抜けてしまうライにルゥは羽を震わせて「君の正体がわからない以上はできないよ」そう告げると青年は肩を大げさに落とした。 「俺は”地獄民”のケイ。得意なことは力で相手をねじ伏せること。でも、俺の村にはもう俺以上に強い奴がいないんだ」 「……地獄民? なんだそれ?」  聞いたことがないライであったのでルゥに尋ねれば彼は思い出したように羽を伸ばした。 「聞いたことがある。正式な地獄の(たみ)として受け入れられた存在の種族……それが地獄民だって」 「あたり! でも俺、もっと強くなって――地獄をぶっ壊したいんだ」  ライとルゥは顔を見合わせた。
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