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《信念》
ケイを仲間に引き入れて三人となった彼らは旅を続けた。その道中で様々な怪物が現れたのでライはケイの実力を見ることにしたのだ。
今回の敵は骸骨のような出でたちをした半分人間で半分が骨で覆われた怪物だ。恐らく、受刑者のゾンビ化が進んで一歩手前で類人猿になる頃であろう。
ケイが木でできた丸太で振り上げた。
「うらぁぁーーーー!!!」
ドンッ! 音が鳴り響き怪物が吹っ飛ばされた。だが立ち上がり突進してくる。
ケイが丸太を構え、足を運んでから――右へ旋回する。
ガツンッ! 鈍い音が響き打ちのめしたかと思ったが、――違う。怪物はニヒルに弧を描いたかと思えば、ケイを引き寄せようとした。
そこへライが待ったをかけたように二人の間を引き裂いた。右手に持った短刀で喉元を左から右へすらりと切り倒す。人間と骨なので少し血が出たくらいではあるが、怪物がぶっ倒れた。
ケイの顔は青ざめているが、ライは短刀を縦に振り鞘に収めた。
森のなかからルゥがひょっこりと現れる。
「終わった~? 修行」
「お、ルゥか。お前の方こそ、木の実とか取ってきたか?」
「途中で類人猿みたいな怪物には出くわしたけど、倒しておいたよ。木の実はその拍子で獲れた!」
「……その怪物は捌けたか?」
ルゥが口笛を吹く。最近は捌いた怪物を食べられるほどの図太さは持ち併せたが、捌くのはまだ平気じゃないらしい。
はぁ……などと息を吐いたライは尻もちを着いているケイへ「俺はルゥが倒した怪物を捌きに行くから」そう言って出て行ってしまった。
軽やかに跳躍をして走って行ってしまうライにケイは唖然としていたが、ルゥが手を差し伸べる。
懐にはリンゴやぶどうのような木の実が抱えられていた。
「大丈夫? そんなに怖かった?」
「あ……うん。というか、ライもルゥもすごい……よな。あんな化け物相手を一人で」
立ち上がらせた拍子でルゥがケイにリンゴを渡した。
「別に僕たちだって最初から強かったわけじゃない。特にライはそうだよね。――守るべき人が居たり、信念があったりしたから強くなれたんだ」
「信念……か」
シャクリと音を立てるケイにルゥが微笑んで自身もぶどうを食べる。爽やかな甘みが身に沁みた。
「言ったけれど、ライは僕の翼を直すために僕と一緒に来てくれている。でもその前は、仲間たちを守るためにずっとこの世界で生きてきたんだ」
ルゥは少ししか会わなかったレレとタキの姿を想起する。彼らは元気にしているだろうか。
無事であることを願ってルゥはケイへにこりと微笑んだ。
「僕もまだ弱いから、まだまだ弱いからさ。一緒に強くなろうね、――ケイ」
「お、おうっ!」
なぜか顔を赤面しているケイを不思議に思うルゥではあったが、「戻ったぞ~!」そう言って怪物を捌き終えたライが戻ってきたのだ。
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