《説教》

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《説教》

 今日の献立は骸骨のだしで取ったスープに類人猿のほろほろ角煮にりんごとぶどうを添えたものだ。  醤油ベースの角煮はライの舌を唸らせた。作ったのはケイである。 「うまっ! お前、本当に料理上手いよな」 「そうかな、えへ。美味しくできたのなら良かったぜ!」 「うん、美味しいよ~! 本当にケイが来てくれて嬉しいな」  頬張って食しているルゥにケイが頬を染めるなかライは食べながらマイ箸で二人を指さした。 「そうだ。今後の予定だがな――」 「ライ、行儀が悪い。箸は下ろして、指も差さないで」  一瞬の間が空いたのちライは苦悶の表情を見せたかと思えば、箸を置いて手をしっかり地面に付けた。 「んで、話に戻る。これから先が地獄の門に近づくルートだ。油断も隙も見せるな」 「うん。でもその道は近道なの?」 「まぁ近道だな。だが地図によると、――森林のなかに天然温泉があるらしいんだ」  また間が空いた。だがそれは束の間であった。  ルゥが折れた羽をバタつかせジャンプする。 「お風呂に入れるの!?? やったーー!!!!」 「えっ!? ふ、風呂!?」 「おう。地図によると明日行く場所がそのあたりを通るんだ。修行だけじゃなくてたまにはそういうのも良いだろう?」  「いいよ~!」ルゥがくるくる回りだしているが、ケイは赤面をしていた。どういうことかわからなかったライが首を傾げれば「ルゥも一緒に……なの?」ケイは口をすぼめ俯いていた。  ますます意味不明であった。 「あたりめぇだろ。こいつも男なんだからよ」 「え、お、男!?? 男だったの!??」  ケイが飛び上がったのと同時にルゥを凝視する。大きな縁取った金目に艶やかな長い髪はどうみても女の子だ。しかも声も甲高い。  ルゥは呆れた様子でなぜかライを見た。 「僕は男だよ……。だからどっかの誰かさんみたいに軽々しく胸とか触らないでよね」 「む、胸、触ったの!??」 「胸もなにもお前がよくわかんなかったんだから仕方ねぇだろう。別に減るもんじゃねぇしよ~」  口を開閉させて驚愕している様子のケイとは打って変わり鼻をほじっている一応、端麗な顔つきであるはずのライではあったが反省の色は見せていない。  だが本当に男であるので確かに減るものではないかな、そうルゥは思いを抱きつつ「失礼に値するからね!」一応説教はしておいた。  この優しいが粗野で馬鹿な男は本物の女性に対してもしそうだなと感じたからだ。 「女でもよ、武器とか持ってたらどーすんだよ?」 「武器が持っていたら戦えばいいじゃないか。君のやっていることは地上の世界やオアシスでいうセクハラです」 「なにそれ?」 「最低行為のことです!」  ルゥに再び説教を受けられているライではあるが、ケイは内心ではそれは地獄でもそうだと思うと感じていたのであった。
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