《地獄の門》

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《地獄の門》

 近道ではあったが困難な道を抜けてたどり着いた地獄の門。これまで三人で戦ってきて死なずに済んだのが奇跡だ。  温泉で一息ついてから道中はまさに険しかった。行く先々で怪物と出会い戦闘をした。ケイは骨で作った棒術で戦い、ルゥは風を使用し、ライは短剣で乗り越えることができた。  そんな過酷な状況で芽生えていく絆はすさまじく、互いのコンディションは三人で高め合っていったのだ。  おぞましい佇まいである地獄の門の目の前には体長3メートルはあろう巨大な牛型の人間が大型の槍を持ってそこに居た。暇そうに欠伸をしている姿に樹々(きぎ)にまぎれて隠れている三人が息を潜める。 「あれが、地獄の番人……。かなり大きいね」 「あたりめぇだ。しかもあれでかなり強いって言うからな。厄介なもんだ」  ルゥが息を呑み、ライは腰に下げた短剣をぐっと握り締める。「じゃあこの前の手はずで良いんだよね?」ケイがライへ尋ねれば強く頷いた。  ケイとルゥが立ち上がり「行ってくるね」そう言って門番のところへ向かった。ライは戦闘にならないことを願いながら短剣に力を込めるのだ。  門番が生欠伸をする頃に尋ねてきたのは体格の良い茶髪で変わった衣装を着た人間と――美しい金色の髪の人間であった。 「あのぉ……、少し良いですか?」 「お話したいことがあるんです!」  門番は茶髪の青年には目もくれず金髪の髪の人間をじっと見つめた。よく見れば背中に純白の羽を生やした――天使である。 「お前……テンシ、か?」 「あ、はい。僕、天使で身内に裏切られてここに来てしまったんです。……お願いです、どうか僕らを地の龍に会わせて下さりませんか?」  門番の瞳がぎょろりと動いた。ケイとルゥが肩を震わせる。――牛の瞳が樹々に向けられた。 「お前らは嘘を吐いているな。茂みの方に一人、ニンゲンが隠れている」 「あ、そ……それは、その……」 「隠れてはいますけど、あなたが僕たちの話を聞いてくれれば危害は加えません! お願いです。僕たちを地の龍に会わせて下さい!」  ルゥが深く礼をすればケイも慌てて同じように礼をする。だが門番の牛は鼻を鳴らしただけであった。 「ならぬ。地の龍様に会うという覚悟を示すのならば――オレを倒せ!」 「……ッチ! ――牛の人外が人間様に歯向かうんじゃねぇよっ!」  茂みに隠れていたライが飛び上がったかと思えば門番に向けて眼前に刃を向ける。――しかし槍で応戦されてしまい跳ねのけられてしまった。受け身を取って態勢を構える。  ルゥが手のひらに最大限の息吹を込め、ケイが隠し持っていた棒を構える。  門番の瞳が充血しにやりと笑う。 「来い、ニンゲンたちよ! 貴様らが地の龍様にふさわしいか見定めてやる!」 「お前ら、この牛人間に負けるなーー!!」  ライの掛け声で戦闘が始まった。
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