《加勢の豚》

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《加勢の豚》

「はぁっ!!」  ケイが棒術で門番の身体を仰け反らせようと踏み込んだ。すると門番が仰け反ったのでルゥが風の竜巻でさらに上体を崩す。 「風よ、威力を増させ――我に力を与えたまえ!」  突風が巻き起こり牛の上体が崩れた。すぐさま跳躍の黒龍、ライが踏みこんだ。 「死にやがっれぇっ!!!!」  勢いよく刃を振り捌き一本取ったかと思うが、門番は槍で防いでいた。――門番が振り上げてライを真っ二つにしようとするが、ライも負けずに身体を捻って宙返りをする。  ――そして懐に入り短刀を構えた。 「うっぐぁっ!??」  懐に刺さった短刀を捻り、抜き出す。多量出血で門番の身体が崩れた。  ドサリと倒れる牛の門番にケイは骨の棒を、ルゥは風を風を、ライは短刀を――構えて一斉攻撃を仕掛ける。 「待てぇぇぇぇーー!!!!」  扉から声がしたかと思えば轟音を立てて――開いた。分厚い扉のなかから手が伸びたかと思えば、それは門番とは違い人型の豚であった。 「貴様らの強さは見事だ。だが同僚を殺すのは見過ごせない」 「はあ? こいつがかかってこいって言ってきたんだ。だったらなんだ? ――お前もこいつと一緒に真っ二つにして網焼きで焼いてやろうか?」  苦心な表情を見せる豚の門番ではあったが「僕たちは目的があって地の龍に会いに行きたいんです!!」ルゥがライを押しのけた。  豚の門番は牛の門番の介抱をしつつルゥの言葉に驚いた表情を見せる。それでもルゥは構わない。 「僕はオアシス出身で、ある者に裏切られて翼を折られてしまいました。僕の翼が直らないので地の龍に会いに行って、翼をなんとかしてもらえることはできないかと思っているんです。僕は、――また飛んでオアシスに戻りたいんです!」  ルゥの熱弁に圧巻された門番たちではあるが「裏切り者は……誰だ?」牛の門番が呻くように尋ねてきた。  ルゥたちは瞳を瞬かせたものの「双龍のミキって言われている奴だ」ライが苦虫を噛むような表情を見せる。  門番二人は互いを見合わせた。 「双龍のミキ……だと? それは本当か?」 「あぁ、そうだ豚野郎。この天使のルゥの羽を折って、挙句の果てには地獄に叩きつけたんだ」 「豚野郎ではない。俺は――」 「おい、豚。さっさと話さねぇとてめぇの首を撥ねて串刺しにして焼くぞ?」 「……ぶっふっ!!」  冷めた空気になってしまったがケイが吹き出してしまった。ライの挑発がおかしかったようだ。  ケイがケタケタと腹を抱えて笑っている最中、豚野郎は咳払いをしてから「ミキは地獄にとって脅威の存在となりつつあるんだ」牛野郎の手当てを終えて担いでいく。 「ミキがどういうわけかは知らぬが、あるときから地獄を手に入れようとして来ているのだ。地の龍様もお怒りだが……力を吸い取られてしまっている」 「え……?」  豚野郎の言葉に今度は三人がまた目を見開いた。  なぜならば、地の龍が居るからこの世界に怪物が出来ていると思っていたからだ。
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