《目的はなに?》

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《目的はなに?》

 豚野郎が言っていることが信じられない様子ではあるが、それでも話の続きがあるようだ。 「地の龍様と親交があった天の龍様の側近として居たのが、あの双龍のミキだ。……そこの天使の羽を折った、というのは本当か?」 「マジに決まってんだって言ってんだよ。豚」 「……ライ、さすがにそれは失礼だからね」  一応フォローを入れつつも豚野郎に頷けば「……ヤツはなにを狙っているんだ?」息を漏らし、牛野郎を担いで手招いた。 「地の龍様に会うには時間がかかる。この地獄でいう三年だ。それが嫌ならば、ミキがなんの為に作り出したか知らぬ”がしゃどくろ”の一体を倒せ」  がしゃどくろとは死人の怨念の集合体を指すのだが、豚野郎が言うには受刑者がゾンビ化する原因を作ったのがミキに関連しているということらしい。  扉へと誘われ三人が進む道中でライは唇を嚙みしめて拳に力を入れた。  ガツンッ! 壁に拳を入れる。 「なんだよ、あのくそ野郎は……! なんの目的でルゥまで地獄に堕としやがったんだ? それにがしゃどくろも……。――どうしてだ?」  疑念と憎悪が合わさってさらには困惑という感情も抱いたライは複雑な感情すぎて頭を叩いてしまう。  恩師であった人間に地獄に堕とされ、さらには仲間同然になったルゥの羽も折り、さらには自分と同じく地獄に堕とした。  何度も頭を打ち付けていくうちにあることを思い出す。ミキに言われたのだ。 『ライは今の地獄を変えられる。僕を上回るほど――変えられる』 「ラ、ライっ! そんなに頭打ち付けたら死んじゃうからっ!」 「そうだぞ、ライ!」  ルゥとケイが我を忘れていた自身を取り戻してくれた。ライは何度も頭を打ち付けたが石頭であったおかげで出血もなく腫脹もなく無事であった。  ルゥが羽を震わせ「良かった……」安堵している様子で背伸びをしてライの頭を撫でる。ライははねよけようとしたが、ルゥになすがままに撫でられてふて腐れていた。  豚野郎が牛野郎を連れ、針の山で一度止まった。 「俺は怪我をしているこいつを手当てして地の龍様に報告に行く」 「俺たちも連れていけ」 「それはならぬ。あのがしゃどくろを倒さぬ限り、お前たちは連れては行けない」  ライが告げた途端に豚野郎の瞳がぎらりと輝き、――なんと去ってしまったのだ。呆気ないほどの対応にケイやライが疑問符を浮かべているが、ルゥは違ったようだ。 「もしかしたらがしゃどくろを倒すことで、地の龍は僕たちの力を見定めるようだね」 「なんでだよ。俺たちがよそ者だからか?」 「もしくは異端者だから、とか?」  ケイの言葉に今度はライが疑問符を浮かべているのでルゥは長い息を吐く。どうしてライはこんなにも馬鹿なのだと思いながらも、素直で優しいライを知っているのでルゥは言えずにいた。  だが異端者であるのは知っておいて損はないので「違う人、違う種族ってことだよ」そう優しく(さと)すように教えるのだ。  ライが納得した様子で頷いたので三人はそびえ立つ針の山を見てから、がしゃどくろの場所を探しに向かうのであった。
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