《かつての仲間》

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《かつての仲間》

 地獄で散策をしていると受刑者たちが門番たちによっていたぶられている姿が見えた。火炙りやら針の山やら血の池地獄に沈み込められるやら……そんな残酷な光景にルゥは目を背けてしまう。  だがライは違った様子であった。 「あれ? 受刑者ってゾンビ化するのが普通じゃなかったか?」 「本来はそうなんだけど、最近は荒れているだが規律を守るためか、地獄の番人が捌く場合もあるんだ。それでゾンビ化を防いでいるって」  ケイの言葉にライは舌打ちを打った。自分たちの食糧確保までも(はばか)れなければならないのかと思うとうんざりしてしまう。  しかもよく見たら地獄の番人も受刑者が痛む姿を見て楽しんでいる。腹立たしいにもほどがあった。 「――行こうぜ、早く」 「あ、うん!」 「おう!」  ルゥとケイを連れてがしゃどくろの場所へ向かおうとした。――そんなとき。 「さぁ~て、寄ってらっしゃい見てらっしゃい! 楽しい楽しい受刑者同士のバトルが始まりますよ~!!」  巨漢の豚人間が大手を振って現れた。そこに居たのは――双眼鏡を持った水色髪の人間と大剣を持った白髪の人間。  ライの目が見開いた。 「レレ、タキ!」  ライの言葉に二人が顔を見上げた。その顔は真っ青で生きた人間ではないような感じが伺える。  ケイはともかくルゥも気が付いた。――ライの身体が熱くなり力が込められた。  ライは電撃のように走ったかと思えば、巨漢の豚に向けて――刃を振るった。 「てめぇ……殺すっ!!」  豚人間の喉元に刃を向けようとすれば突風がライの身体を包み込んだ。――ルゥが咄嗟に放ったのである。  ライは大きな風の力で転げ落ち、ルゥを睨みつけた。だがルゥは負けられない。 「ここで大騒動が起こったら地の龍に会いに行くのは無理だ。それに、――今ならあの二人を助けられる!」 「ルゥ……」  ルゥの言葉を信じライは無言のままのレレとタキを連れて走り出した。するとルゥが再び手のひらに息吹を込め「風よ、――我らを守れ!」豚人間やその場にいた人外を風で吹き飛ばし――ケイと共に走り去った。  走り終えた後に丘があったのでライは久しく会えたレレとタキを心配する。 「お前ら、大丈夫か? 怪我しなかったか?」 「……あ、……あ」 「え、レレ? 言葉が言えないのか?」  強く頷くレレではあったがタキがなにかを言おうとしているが言葉が詰まって伝えられない様子であった。  ルゥとケイがこちらに向かってくる。あの二人ならレレとタキがなにを伝えたいのかわかるかもしれないという希望が持てた。  だが次の瞬間――レレが気色の悪いゾンビになったかと思えば、タキも同じようにゾンビとなってしまった。 「え……?」  ライはこの状況を誰かに説明して欲しかった。
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