《金色の青年》

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《金色の青年》

 ――ゴツンッ! 頭上からなにかが落ちてきたかと思えばライは地面へ勢いよく態勢を崩す。激痛が走り「なにすんだっ、レレっ!」などと振り向こうとしているが、重しを乗せられているのか重くて動けない。  退けようとして粗野にその者を触れると――さらりとしていて、艶やかな糸に触れた。一瞬、驚いてしまった。 「……ラ、ライ。その、あの……乗っかっている人、さ……」 「あぁ? やっぱり人かって、お前じゃなかったのかよ」 「違うんだ。その、あの……羽が生えているんだ!」 「はあ?」  どういうことだというライにレレも一緒に手伝ってその者を介抱した。長い金色の髪によくわからない浴衣のようなものを着ている。女かと思って胸に無作為に触れたら硬いので男だというのがわかる。 「あのねぇ……、ライってそういうの馬鹿だよね」 「身内検査だから良いんだよ。――さぁって」  ()められていた足枷を短剣で外そうと思って……やめる。見知らない奴だ。こんな奇麗な顔立ちをしているが極悪犯かもしれない。  それに先ほどレレが言っていた羽が気になった。――確かに翼が生えている。純白の翼だ。  だがどちらの翼も折れてしまい血が滴っている。……気が変わった。  カツンっという音を立てて重たい足枷を外したのだ。驚いて目を見張るレレにライは「こいつの手当てをするぞ」先ほどの重たい身体はどこへやら、軽い身体を担いでレレに後を任せた。  自分の住んでいる寝床に着き、金髪の青年を布団に下ろした。羽の出血が酷いが消毒をしてヨモギとドクダミを煎じた塗り薬を塗布して包帯を巻いた。  怪我の扱いには慣れている。この地獄では怪物なども出て受刑者ならず冤罪者も食い尽くそうとする。  受刑者はまだゾンビのように再生能力があるからまだ良いが、冤罪者は人間と同じだ。ここで死んでしまえば本物の受刑者となり、罪を犯したとされる。  だからライはこの世界が嫌いだ。こんな理不尽な世界などなければ良いのにといつも思う。 「んんぅ……」  金髪の青年が身を捩らせる。少し羽を羽ばたかせて「痛い……」呻くように高い声を上げたかと思えば少しずつ瞳を開ける。  瞳が吸い込まれそうなほど金色の瞳で驚いた。 「ここは……、どこ?」  少年の声ではないかと思うほど甲高い声であった。ライは呆気に取られたかと思えばもう一度青年の胸などを触る。やはり硬い。 「……男、だよな?」 「あの、君って結構失礼だよね」 「恩人に礼も言わないのかお前は」 「あー……それはそうだね。ありがとう、君の名前は?」  手を差し伸ばされたがそっぽを向いて「ライだ」短刀を鞘から抜き出してから砥石(といし)で研いでいく。  金色の青年が少し羽を動かした。 「僕の名前はルゥだ。よろしくね、――ライ」  短剣を退けて右手を差し出すルゥにライは呆然とした。ピクピクと動く羽に驚いたのもあるが、にっこりと微笑んでシルクのように奇麗な手を向ける青年の姿にも神聖さがあって見惚れたのだ。
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