《願い》

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《願い》

「ど、どういう……ことだ……?」  突如として仲間であったレレとタキとの再会を喜ぶことが出来ず、ゾンビとなってしまった二人にライは大困惑した。  どうして二人が受刑者となってしまったのだろう。  どうして二人がゾンビとなってしまったのだろう。  ――どうして二人が泣き出しそうな顔をしているのだろう。 「い、嫌だ……。嫌だぁーー!!」  悲哀に満ちた表情で襲い掛かろうとする二体にライは叫ぶことしかできない。どうしたら良いのかわからないのだ。  しかしそんなとき、新たな仲間である風使いのルゥと棒術使いのケイがライを庇ってくれた。 「大丈夫? ライっ!」  ルゥが風でタキの大剣を遮ってくれた。  想起するのはタキが地獄に堕ちて自分と暮らしていた時であった。助けてから自分をリーダーと呼んで慕ってくれたのはタキであった。  タキに「リーダーは誰よりも優しくて頼りがいがあるっす!」そんなことを言ってくれたのが励みになった。力になった。  ――そんなタキは突風で倒れ込んでしまった。 「どうしたっ、ライ! ライらしくないぞ!」  ケイが透き通った骨の棒でレレを蹴散らした。  想起するのは初めてレレと出会った頃であった。レレは怪物に追われて助けたのがきっかけだったが、自分のような荒くれ者を理解してくれた。また観察眼もずば抜けてあったので、最初の相棒として副リーダーとして居てくれたのだ。  レレに「ライは強いけれどそれだけじゃないもんね」いつも隣で励ましてくれたのはレレだった。  ――そんなレレの身体が(ひず)みを上げていた。  ライは二人とたくさんの思い出があったのだ。一緒に狩りに出て多くの仲間たちを引き連れることができたし、衣食住を共にして語り合うこともあった。  ……ある夜のことであった。 「ここから抜け出せることが出来たら、ライと一緒に居たいな」  眠る頃にレレがふと呟いたかと思えばタキも元気よく手を挙げていた。 「俺もっす! 俺もリーダーとずっと居たいっす!」 「な……なんだよ、急によ。今日は変な日か?」 「変な日って……」  レレが息を吐き出せば真剣な顔をして「お願いがあるんだ」ふとこんなことを言い出した。 「タキはともかく、僕はライやタキが居ないとすぐに受刑者になると思うんだ」 「なっ、そんなことさせねぇよっ!」 「そんなこともなにもないよ。――それが現実なんだからさ」  だから……そう繫げてレレは屈みこんだかと思えば、――跪いた。 「もしも僕が受刑者になってしまったら、僕を切り殺して焼いて欲しい」 「……なぁっ?」 「噂を聞いたことがあるんだ。受刑者になった後に切り殺して焼いて灰となれば……天国に行けるって」  ライは戸惑いの色を見せたが、だがそれでもそのときのレレは真剣そのものであった。
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