《ミキ》

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《ミキ》

 天空の世界オアシスにて、長机に座り羽ペンで書物に記入をしている長い黒髪の男性はふぅと息を吐いた。  もうすぐだ。もうすぐで自分が解放される。――思い通りになる。  眼鏡を輝かせにっこりと微笑んだ男性に羽を生やした天使が伺いに来た。 「ミキ様。――ルゥ殿はいつお戻りになられるのでしょうか? もう一か月以上も連絡が来ませんし……」 「あぁ、ルゥくんなら大丈夫さ。きっと来るよ、――あの子を連れてね」 「あの子……?」 「あぁ、気にしないで。こっちの話だから」  書類を渡し天使へにこりと微笑んだ。天使は不思議な顔をしてその場を去ってしまう。  そのまま席に座るかと思えば窓辺に向かい開け放った。カーテンがふわりと揺れて良い風が入る。  自身の右手を見た。――枯れ木のようにガサガサであった。 「あとは頼んだよ。ルゥくんに――ライ」  空へと一人呟いたのだ。
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