《決意》

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《決意》

 レレとタキをお焚き上げし、夜を越した翌日。――ライは普段よりも腫れぼったく充血していた瞳であった。夜通し泣いていたからだ。だがそれでも、骨だけとなった二人を大木の下に埋めて、さらには手を合わせた。 「あいつらが無事に……天国のもとへ逝けるように」  すると傍らに居たルゥや背後に居たケイも一緒に手を合わせてくれた。地獄の空は薄暗かったが、それでも朝だというのは暮らしてみて知っている。  レレとタキと共に過ごしたこの時間を――忘れはしない。  ルゥが金目を大きく見開き、羽をバタつかせた。 「ライっ! 茂みのなかから怪物が現れたよっ!」 「げぇっ、まじかよっ! こんなときに……」  途方に暮れているケイにライはぎりぎりまで手を合わせてから「また来るからな」そう伝えて短剣をかざし、向かってくる怪物に突進し――大きく跳躍する。  毛の薄い類人猿のような怪物をライは九の字に曲げてから短剣を大きくまっすぐに向けて――切り付けた。  グサッ! 亀裂が入り、血飛沫が入るなかでも構わずにライは類人猿の顔を蹴り上げて短剣を深く刺し込んだ。  類人猿の呻く声が聞こえ、痛みに耐えきれずに大きな右手でライを払いのけようとする――が、その前にライが短剣を抜き、反転した拍子で首元を引き裂いた。  類人猿がどさりと倒れた。ライが類人猿を捌くために短剣をぎらつかせる。  ルゥが駆け寄って血だらけになったライの顔を拭いた。甘い香りがした。 「今回は僕も捌くの手伝うよ。いや、これからはちゃんと手伝う」 「……どうした、急によ?」 「――君が寂しそうだから、手伝ってあげようかなって」  ルゥが羽をパタパタさせてライの後ろに隠れながら、捌くのを見守った。ケイも慣れた手つきで手伝い、三人で協力して食糧確保をする。  そんなこんなで捌き終えて作ってくれた朝ごはんは類人猿のステーキとほろほろ角煮であった。 「うぅ……、食べるの怖いけど……よしっ!」  ルゥが顔を青ざめながらも食していけば次第に顔を緩めて「おいしい~」にこにこな笑みを見せていた。  ケイがルゥの感想を嬉しそうに聞きながら「それは良かったぜ!」角煮を食べていく。  ライは昨日と今日の出来事を想起しながらこれから始まる朝を、今の出来事よりも濃密で過激になるであろう日々を送るのだろうと考えながらステーキを頬張った。  ルゥの背中の羽をなんとかして直し、なんらかの形でオアシスへ行けるとしたら……なにかしらの目的を持っているミキを倒せたとしたら。 「俺は、俺は今の地獄をなんとか変えたい。――変えてみせたい」  確固たる意志を持って言い放ったライにルゥもケイも微笑んで、二人は拳を掲げる。二人の行動に呆気に取られたライではあったがルゥに急かされて右手をこつんと三人で合わせたのだ。  ――決意の証が生まれた。
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