《がしゃどくろの戦い》

1/1
前へ
/45ページ
次へ

《がしゃどくろの戦い》

 朝食を終えてから三人はがしゃどくろの居場所へ向かった。豚野郎はなにも言ってくれなかったが、がしゃどくろというのは巨大な図体であるので道なりを歩いて行けば見つかる可能性があると、ライとケイが踏んだのだ。  二人ともがしゃどくろとは対戦したことはないが、地獄にずっと居るのでその存在は知っているらしい。  ルゥが羽をパタパタさせた。 「へぇ~、二人とも知っていたんだね」 「まぁ俺は噂程度だけどな」 「俺は見たことあるぜ。結構でかかった!」  ケイが自慢げな顔をしているのでライとルゥは興味本位で尋ねてみた。するとケイは「でかくて不気味なんだよな。怨念(おんねん)の集合体って聞いているぜ」思い出したようで身体を震わせた。  ライは目視だが湖の方角に白い塊があるのが見えた。 「なんか、変なのが居るぞ」 「変なのって?」 「なんか……白くて、骨、みたいな」  すると白い塊が轟音を立てて動き出したのだ。驚く二人にケイが口を大きく開けて「がしゃどくろだ……!」目を見張っていたのだ。 「がしゃどくろって、俺やあの豚野郎が言っていた?」 「あぁそうだ。まさかこんなところで出くわすなんて思いもしなかったぜ……」 「でも倒せって言われているからな~。別に良いんじゃねぇの?」  頭を掻いてから呑気に鼻をほじろうとすれば再び轟音が聞こえた。――ライの黒い瞳が鋭くなった。 「ライも呑気すぎっ! もう、三人であいつを倒すよ!」  手のひらに息吹を込めたルゥが構えのポーズを取った。ケイもまた透き通った骨を持って準備万端である。今回は二本で対抗だ。  だがライはいつもと同じように鞘から短剣を引き抜き――構えた。 「行くぞぉぉぉっっっ!!!!」  ライが初めに大きく跳躍をして巨大な骸骨ことがしゃどくろに飛びついた。それから重力を逆らわぬほどの走りを見せて、顔面に向けて――大きく飛来した。  ゴツンッ! 音が鳴り響いてがしゃどくろの骨のかけらが一部落ちる。ライが上で暴れている最中でルゥが突風を降り注いだ。 「風よ、――我の手となり足となり踊れ!」  二つの突風ががしゃどくろの足元を狙って放たれた。 「――はぁぁぁっっ!!!!」  次に二本の骨の棒を構えたケイが力強く振り上げてブーメランのようにがしゃどくろへ攻撃を仕掛ける。  がしゃどくろはなかなか倒れることはないが彼らは必死に戦った。だが巨大すぎる相手ゆえに三人の体力が消耗しつつある。 「はぁ……はぁ……」 「やっぱり、強い……ね」  ケイが汗を掻き、ルゥも息を吐き出した。だがライは構わずに攻撃を仕掛けようとしたときであった。  先ほど、ライが欠けさせた骨が輝き出したのだ。輝いたかと思えば、がしゃどくろは灰と化してしまう。 「どういう……こと、だ?」  ライが湖に輝いている骨のかけらをじっと見つめたとき――骨が変形し人間となったのだ。
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加