《名前を付けてくれぬか》

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《名前を付けてくれぬか》

「な、なんで俺が付けんだよっ! お前の名前なんてよ……」 「減るものではなかろう? 我に名前を付けてくれぬか?」  当惑している様子のライにルゥやケイもどういうことなのかを把握したかった。というよりも、がしゃどくろの核として生きていた心臓が、怨念の集合体が集結して人間となった……というのもまた驚きである。  だが名前を付けるのはなんだが楽しそうに思えた。 「じゃあ、ルカとかは? 可愛くない?」 「俺は、サヤ……とか」  ほかにもカナやエリなどもルゥやケイが案を出すのだが、白髪の少女はライに決めて欲しいようだ。耳を傾けない。  だがライも唸って考えた挙句に―― 「じゃあ……ミナとか。ワレだとさすがにおかしいし、シューゴータイってみんなのこと指すだろ? じゃあミナ(皆)ってことで」  安直すぎるが可愛らしい名前にはなったのでルゥは「賛成!」手を挙げて賛同し、ケイも嬉しそうに微笑んだ。  呆気に取られていたミナは自分の名前が決まった途端に口端を綻ばせたのだ。 「よかろう。我の名はミナだ。これからはミナと呼ぶからよろしく頼もう」 「おう、よろしくな――ミナ」  ライに手を差し伸ばされたミナはその手を握り軽く頷いた。  今回は葬儀もあった故に、がしゃどくろとの戦闘もあったので、湖で野宿をすることにした。がしゃどくろは無事に倒したので、弾丸旅だが明日には豚野郎の所へ行って地の龍に会うつもりだ。  だがその前にだ。 「ねぇミナ。君はがしゃどくろとしてではなくて、生まれて落ちてからなんの力があるのかな?」  一緒に果物などがなってないかを見に来たルゥがミナへ尋ねる。ちなみにミナの髪はあまりにも長すぎたのでライがほどほどに切り、ルゥがツインテールに結わいた。  ケイが「めっちゃ可愛い……」頬を染めてライと共に水浴びをしてくると言ってきたのでルゥとミナは果物狩りをしてきたのだ。  ルゥが桃のような果物を取っていた際、ミナは考え込んでから「恐らくは治癒能力があるはずじゃ」手元にあるかごに桃を詰めた。  ルゥの羽が少し伸びてから震える。 「え、ほ、ほんと!?」 「我、いや――ミナはあの図体のでかいがしゃどくろの心臓で核だったのじゃぞ。動力源がミナだったのだから、がしゃどくろの身体を保たせていたのじゃ」 「じゃあさ……、僕の翼って直せないかな?」  ルゥは背中を向けて折れた羽をミナに見せた。「ひどい有様じゃの……」嘆くように言い放ったミナは両手をそっとかざして――力を込めた。 「かの者の翼を直せ、そして――広げよ!」  ルゥの羽が輝き出し少しだが折れた羽が修復された。……だが飛ぶにも飛べずにいたのだ。  ミナはすまなそうな顔をし「力不足じゃった、すまぬ」深く礼をされてしまった。 「いや、大丈夫だよ! こちらの方こそありがとう」  翼は治らなかったが嘘のように戦闘時の回復力が上がったのは言うまでもなかった。
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