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《今度は犬》
翌日となり、新たな仲間となったミナを引き連れて再び地獄の門へと向かった。四人の目的はミナが本体で出来上がった怨念の集合体である、がしゃどくろを倒したことを報告するためだ。
道なりを進みながらライはケイと共に先導を、ルゥとミナはその後ろについていって話をしている。
「ルゥ。今から地獄の門へ向かうと言っていたが、誰に会うのじゃ? 地の龍か?」
「地の龍には会いたいね。でもその前にあの豚さんと牛さんに会わないとね」
「まぁ、あのがしゃどくろは倒したしよ。もうあの豚と牛は言うこと聞くんじゃねぇの?」
鼻で笑いながら後ろ手で手を組むライに透き通った骨の棍棒を携えたケイは考え込んでいた。それにライが気づいた。
「なんだよケイ。あの豚と牛がまだなにか言うと思ってんのか?」
「う~ん。なんというか……、地獄民の俺が言うのもなんだけどさ。地の龍って簡単には会えないと思うんだよな」
「……あのでかい怪物を倒してもかよ」
ケイが苦笑いしながら首肯する。後ろ手で「怪物ではない! ミナなのだ!!」ミナがピョンピョン跳ねながら反論していた。
ケイが和らいだ顔をする。
「まぁミナというか、がしゃどくろを倒しても地の龍にはまだ会えないと俺は踏んでいるぜ。そこまで地の龍は甘くはないと俺は思う」
「はぁ……まじかよ。これだけ旅というか、地獄の門まで行けたのによ。あーうぜぇ」
「まぁまぁ、ライ。また困難があったとしても頑張ろうよ。――治癒の力を持つミナが居るんだ。地獄だけに、鬼に金棒だね」
「ふふふっ……! 鬼に金棒じゃっ!」
ルゥに褒められて浮足立っている少女のミナではあるがライだけは無知であるので「なんで鬼に金棒で地獄と繋がるんだ……?」首を傾げて唸っていたのでケイが補足をしたという。
地獄の門へとたどり着き、巨大な人型の犬の門番が立っていた。――ライが鞘に収めていた短剣をすらりと抜く。
「おい、犬。怪我した牛と旨そうな身体した豚を呼べ」
「はぁ? 貴様無礼だな、我は――」
「呼ばねぇとてめぇの首を撥ねて捌いて串焼きにすんぞ?」
ぎらついた瞳で短剣を片手に脅迫をしているライの姿はあまりにも教育上に良くないので、ルゥはミナの耳を塞いだ。
「なにするんじゃ~、ルゥよ!」
「はいはい。牛さんと豚さんが来たら外してあげるからね」
ケイが親子のような二人の関係性にほっこりしつつ、短剣に舌を這わせて脅しに掛かっているライを見て息を吐いた。
犬もまたケイのように息を吐き出して「何の用だ?」そう尋ねたので「がしゃくどくろを倒したんだよ、クソ犬」ライはさらに挑発をした。
犬がこめかみに筋を入れたがルゥがわちゃわちゃと動いているミナを前面に出した。
「あの! この子ががしゃどくろの本体の子です」
「なぁ、その娘が……?」
「だからあの……そんな怒らずに――」
「この娘が……がしゃどくろ、か?」
犬の門番がミナをじっくりと見つめた。
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