《目的》

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《目的》

 針の山では怪我をしつつあるがライとケイは着々と登って行った。体力面に関してケイは大柄なのもあり体力があるが、彼よりは一回り小さいライは鍛え抜かれた身体でなんとか(しの)いでいた。  さすが地上から地獄に堕ちても生きていた人間だ。図太すぎるにもほどがあった。だがあちこちに怪我をしていて、もう限界そうだ。 「はぁ……はぁ……、うっし……! あと、もう……ちょいっ!!」 「ライっ、早くミナに治療してもらわないと……」 「平気だっつ~の。お前は文句言う前にしっかり掴まっておけ」 「……文句じゃないのに」  手も足も血だらけであるライの身体が心配だったルゥではあったが、頂上までなんとかたどり着き、ミナの治癒能力を貸してもらった。  ライはケイの方を優先しろと言っていたが、三人はライの怪我の方を優先してその後にケイの怪我を治癒したのだ。 「ふぃ~……。疲れたのじゃ……」  針の山の頂上は平面であったのでミナは座り込んで項垂れた。そんな疲れ果てている少女にルゥは懐から果実を差し入れした。  ミナが飛び上がった。 「ありがとうなのじゃっ、ルゥ! 桃ではないか!」 「一応、ミナのために取っておいたんだ。それ食べて元気出してね」 「わかったのだ。ありがとうなのじゃ!」  桃の皮を剥いて小さな口でぱくぱくと食べていくミナに三人は微笑んだ。ミナの休息もあったので三人も頂上にて休憩を取る。  ケイがこれまで進んできた道を上から見下げて悲鳴を上げていた。水筒に水を入れていたライが「どうした?」声を掛ける。  するとはケイは恐る恐るといった様子で「血が……」なんて言い出したのだ。 「血って、あぁ。ここまで来るときに血を流しながら来たからな。――なに青ざめてんだよ?」 「い、いや~。ここまで血を流しながら来たんだなって思うと、なんだかこの先、不安だなとか思ってさ」 「なに言ってんだ。男だろ? シャキッとしろ」 「あ、う、うん!」  ライの鼓舞に一応頷くケイではあったが内心では不安であった。  地獄民の仲間のなかでは一番の強者ではあるが、ライやルゥと出会ってから自分がこのなかで一番弱いことがよくわかる。ミナは女の子でもあるし、サポート役であるから攻撃手として自分は一番弱い。  そんな自分になにができるのか。どうして国を()ってまで強さと自由を求めてこの旅に参加をしたのかに対しておぼつかなさを感じる。 「あのよ、ケイ。お前は地獄民として不満はなかったのかよ」  突然の問いかけだったがケイは少し考え込んでから「特別不満はなかったけれど外の世界は見たかったぜ」そう答えて先ほどの自問に答えが見えた。  自分は外の世界が見たかったのだ。外の世界が見たくて――この旅に参加をしたのだと。  ライの口元が緩んだ。 「またなにかあったら自分に聞いてみろ。すぐ見つかるはずだ」  そしてルゥとミナの様子を見に行くライの姿に、ケイは内心で負けを認めた。
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