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《似た男》
頂上で休憩していた際に気になっていた大きな扉。早く向かいたかったが、ミナがダウンしていたのですぐには向かえなかった。
「ふぃ~。もう平気じゃっ。ルゥよ、ありがとうなのだ!」
「いえいえ、元気になって良かったよ」
にっこりスマイルでミナに対応し、ルゥも自分の水筒の水を飲む。少しぬるかったが無いよりかはマシだ。喉を鳴らして飲んでいくとケイとなにかを話していたライがこちらへやってきた。
「お前たちは平気か? 休憩取れたか」
「ライこそ平気? ちゃんと取れてる?」
「水飲んで一休憩取れたから平気だ。ケイも多分平気だろうし、――このまま進んでも平気か? ミナ」
視線の方向は少しふらついているミナであった。だがミナは「平気じゃ!」両腕を空に挙げて元気ポーズをする。小さな少女なりに気を遣ってのことであろうが少し心配だ。
「じゃあ、ケイ。またミナをおぶってくれ。戦闘することになったら、お前はミナを守るために動けば良いからよ」
「また俺~? ライが担げば良いじゃんかよ」
「俺はお前らの先陣を切って戦闘に仕掛けるから、ミナが危ねぇ。ルゥはこの通り、お前より貧相な身体してるしよ」
「……なにげに僕を馬鹿にしてるよね?」
ルゥを軽く罵倒してしまったが、とりあえず先導を切って仕掛けることを約束してケイはミナを背負って門の前に立ちはだかった。
大きな門をはじめはライ一人で開けようとするが、次にルゥ、その次にケイが力を貸して――開いた。
大きな通りの横には蝋燭が並んでおり、立てかけられている。そして正面を見ると丸いなにかが輝いていた。
「なんだ、あれ?」
ライが丸いなにかに手を伸ばそうと歩み寄った瞬間――風が吹き、ライは身を翻して身体を逸らした。……蝋燭が一本倒れる。
「貴様らか。地の龍様に用があるという無礼者は」
「てめぇ、なにもん――」
だ……? そう言いたかったのに言えずにいた。
なぜならば目の前には自分の憎き相手、ミキが居たのだから。ライは身体を震わせて、走り出し――地面を蹴り上げる。
「――殺すっっ!!!!」
ミキに似た人物は手のなかに息吹を込めて噴出させたが、その前にライが身を屈めて避けたかと思えば短刀をすらりと抜く。
流れるような動作で首筋へと近づき――切り付けた……かのように思えた。
なんと風の突風が横から迫ってきたのである。男からではない。
それは、喧騒を止めようとしているルゥからであったのだ。
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