《決意表明》

1/1
前へ
/45ページ
次へ

《決意表明》

 ルゥの飛行能力は凄まじいものであった。  地獄の門からビュンと飛んでいき、次第に地獄の暗黒な空をくぐり抜けて脱したのだ。地獄の空の次には地上だが、なんだが感慨深さを感じた。 「ねぇ、ライ。聞いても良いかな?」 「なんだ、急に。って、おお~。あの街にはよく居たな」  地上の世界では降り立たずに天空の世界オアシスに向けて羽ばたくルゥの羽には淀みがない。だが気になることはあった。 「どうして君は、地上に戻りたいって強く願わなかったの? 地獄は嫌だって言っていたじゃないか」 「あぁ……まぁ、今でも嫌だけどよ。でもさ……」  離れ行く生まれ故郷に心中で別れを告げてから「地獄を変えたいなって話はしたよな」ライはルゥに抱えられながらも自分の真意を唱える。 「地獄は大嫌いだけどよ、信頼の置ける仲間は居たんだ。それに今も居る。……だけど、そんな地獄が少しでも変化をしてくれたら、住みやすくなれたらなって思えたら……俺はそれなら地上に行かなくても良いって思えるんだ」 「君はなんの罪を犯していないのに?」 「あぁ。それでも俺は、――今の地獄を変えたい。変えて見せたい」  はっきりとした声音でライは言い放つとルゥは軽く微笑んでから「ライは本当に強いよね」なんて話し出す。  亡くなってしまったレレやタキよりかまだ浅い絆だが、深まりつつあるのだ。だからこそ、ライが地獄が嫌いだけれども変革させたい気持ちが汲み取ることができた。  羽をバサァァァと伸ばしてルゥは空高く飛行する。 「じゃあミキと会ってどういうわけでライや僕が地獄に堕とされたのか、真実を知ることができたらさ、――僕は君のお手伝いでもするよ」 「簡単に言うなよ。俺のはえっと……あの……ネガイって奴だ」 「それを言うのなら願望ね」  間が空いたかと思えば二人は互いに笑い合った。こんなやりとりをするのももう何度目だろうか。 「そうだ、願望だ。俺は地獄を変えたいっていう願望がある。……この地獄を変えたいんだ」 「それをするには手伝いが必要でしょ。自分一人だけやろうだなんて思わないで」 「そういうものか?」 「そういうものだよ」  抱えられながらなんだこのやり取りは……などと考えつつ、ライは空を翔るルゥの表情をなんとなく見つめる。  地獄に堕ちたときには気が付かなかったが、空を飛行する際には楽しげで興奮している様子が見えるので翼を直すだけでも良かったな、そう感じる。  地上の世界からオアシスの世界に入った。初めてのオアシスの世界にライはどういうものか興味があり逸らさずに見つめる。……目を見張った。 「すっげぇ……!!」  オアシスの世界は神秘的で幻想的な世界であったのだ。
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加