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《戦いの末》
「いてて……、なんだよリーダー! 俺の背中使ってよぉ……」
背中を擦るタキではあったがレレがなにも言わないことへ不審に思った。ゆっくりと前方を見て目の当たりにしたのは、リーダーであるライが金色の髪をなびかせた青年に動けなくなっている姿であった。
「てめぇっ! ――――殺すっ」
タキが大剣を振りかざし寸でのところで待ったがかかった。……ライが制したのだ。彼は裏側になって決め技を掛けられているものの、右足でルゥの左足の軸を逸らし仰け反ったところで態勢を逆転させて上に跨った。鋭く輝く刃はそのままだ。
「これで満足か。俺を負かして、奴隷みたいに自分の翼を探すために連れて行くことをよ」
「違うよ……。僕はただ、君がオアシスを努力しないで平和に保っていることが……あの、許せなかっただけで――」
「でも俺を下僕にすることはできた。良かったな、――天使様」
ルゥが刃を向けられた状態で首を横に振り続ける。違うと言いたいようだが結果論と言えばそういうことになってしまう。
向けた刃先を鞘に納め、ライが息を吐く。そして動揺している様子のルゥに手を差し出した。
「お前は気に食わねぇが、あのクソ師匠に復讐するのは大歓迎だ。地獄とオアシスがどうなるかは知らねぇけど、そこはお前自身でなんとかしろ」
「あ、う……うん!」
「ほら、お前が無駄に動いたせいで包帯が取れてる。――巻き直すからよ」
「う、あ、ありがとう……」
差し伸ばされた手を握るルゥとライではあったが傍から見ていたタキやレレはどういうことか状況把握ができない。
だがライが怪我人であろう金髪の青年を介抱する優しさを抱いているのは二人もわかっていた。なぜならば二人もライに助けられて介抱されて、ここまで生きることができたのだから。
ルゥの上体がぐらりと揺れる。ライが身体を支え「どうした?」尋ねるが返答がない。奇麗な顔立ちをふと見るとルゥは瞳を閉じてすやすやと眠っていた。
白く卵型の顔立ちは本当に女性的で男なのか疑わしいぐらいだ。
「おい、レレ。俺はこのよく眠っている奴と一緒に羽を探す旅に出る羽目になっちまった」
「えっ、羽って……その子の?」
「おぅ。勝負で負けちまったからな。――怪我人に負けるなんて俺もまだまだ弱ぇな~」
ルゥを担いで寝床に戻り、解けてしまった包帯を巻き直す。ついでに薬も塗布しなおした。
「……そんなことないっす。リーダーは誰よりも強いっすよ」
「でも怪我人に負けたんだぜ? 弱いに決まってんだろ」
「それでも強いっすっ!!! リーダーは誰よりも強くて優しいっす!」
すやすやと眠るルゥを見てからライは人差し指を立てた。タキが口を不服そうに噤んだがそれでも気持ちは嬉しかったので「ありがとな、タキ」にっこりと微笑んだ。
タキが嬉しそうな表情を見せてなぜか踊りだしたのだ。今度はレレが注意をした。
「だってぇ~リーダーに褒められたら嬉しいっすもん!」
「まったくタキは……。じゃあライ、ご飯作っておこうか。その天使さんも食べるでしょう?」
「お、よろしくな。レレ」
「まったく、どいつもこいつも……」
よく研がれた包丁でレレが今日の獲物であった怪物を捌いていったのだ。
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