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僕はカーテンを閉めきった仄暗い自室で、勉強机の前に座り、食い入るように読む。
日傘とアームカバーで全身を覆い、大嫌いな日光と闘いながら手にした、見慣れた雨模様の、大切な人からの手紙を。
『ヨウくん、元気?』
あぁ――心が洗われる。
端正な文字も、
『私は……たまにぶっ倒れたりするけど、晴れの日は元気だから心配しないで』
嘘がつけないところも、
『突然ですが、お伝えしたいことがあります。やっと有名なアレルギー専門病院に移ることになりました。多少実験的な面もあるかもだけど、いい先生ばっかりだから大丈夫だよ』
垣間見える配慮も、全部。
『頑張るね。どんな日も笑顔で、ヨウくんと一緒に過ごせるように』
君のおかげで、自分の名前に対する嫌悪感が消えた。
本当に、感謝しかない。
手紙には、書いている途中に突然晴れて架かったのだという、虹の写真が同封されていた。
ってことは、雨の日にこの手紙を? 体調は大丈夫だったのか?
『懐かしの窓越し低画質です笑 いつか、あなたとこんな風景を見られたらな』
淡くレトロな色合いの虹。
「『低』は余計だよ。ほたる」
僕は苦笑交じりに呟いた。
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