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 ノイズは止まない。  でも、でも今日だけは。 『ヨウくん』  私は痛む頭を押さえ、薬臭いベッドの上で、オーバーテーブルに向って、大切な人の名前を書きつけた。あえて片仮名で。  大嫌いな雨模様の便箋も、それだけで特別なものになる。  雨アレルギー。  この世で私だけが発症している、特殊な疾患だ。低気圧不調とも、水アレルギーとも少し違う。  雨に当たるとできる湿疹、脈打つ頭痛。ときには熱や発作も出るので、幼い頃から入院を余儀なくされている。  彼、南 陽に出会ったのは五年前、九歳の夏だ。彼は重度の紫外線アレルギーで、なぜか本来個室である私の部屋をあてがわれた。  当時、入院患者の増加で病棟が逼迫していたこと、同類の疾患であったこと、さらに同い年の児童だったことから、いかがわしい事態には発展しづらいと判断されたのだろう。  ずっとひとりだった私は歓喜したが、雨と紫外線の関係は反比例していて、私の具合がいい晴れの日は彼の具合が悪く、雨や曇りの日はその逆だったので、話す機会はほとんどなかった。  でも、体調不良のとき、カーテン代わりのパーテーション越しに、彼が本をめくる音を聞くのが好きで。
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