届けたいカセットテープ

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ツアー中の運転は、侑が担当。 国道4号線を霊山に向かって走り出した。 「侑、どこ行くの?」 「泊まるとこ。」 「駅前の東横インじゃないの?」 「俺たちは傑の実家。」 「はあ?」 聞いてない。どうしてそうなった?実家に4人泊まるって泊まれるけどあり得ないだろ。どうやって寝るつもりだよ。うちは旅館じゃない。ただの民家だ。昔の家だからちょっと広いけどただの民家だ。 「明日、新曲のMV傑の母校で撮影するんだって。」 「え、知らない。」 「ツアーでめちゃくちゃ受けてるから、『偏光レンズ』もデビュー曲にするってよ。きょうのライブ映像、初回特典DVDにするって。」 「それも知らない。」 「傑は、プレッシャーに弱いからな。何も考えずにライブに臨んで欲しいから全部内緒にしといてって有馬さんが。」 有馬さんは俺たちのマネージャーだ。 「てか、掛田中で撮影って。明日日曜で学校休みなのに。勝手に入るわけ?」 「若い男の先生が担当するってさ。自由に使っていいんだって。」 「撮影班はロケハンしたの?映像プランは?」 『不時着』のリーダーは(たすく)だけど、全部俺に内緒で話進んでるのはおかしいだろ。 「傑。そんなのもうできてるよ。心配すんな。てか、拗ねてんの?」 「若い男の先生って誰なんだよ。」 「さあ、それは俺も聞いてない。」 だいたい、なんでMV撮影が俺の母校なんだよ。なんでアイツがいる学校なんだよ。 嫌な予感がする。
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