届けたいカセットテープ

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(すぐる)、音源できたけど。詩はお前書けよな。」 「おお。」 もうすぐメジャーデビュー。 インディーズとしては、YouTubeの再生回数が伸びているため結構大手のレーベルから声がかかった。 一応、事務所に所属している。マネージャーもいる。来週からはメジャーデビュー前最後の全国5ヶ所ツアー。 いつかまた、アイツが聞いてくれたら……。 (たすく)が作った音源を聴きながら、頭に浮かぶフレーズを書き出していく。 詩的…というより、アイツと話したようなことを歌にしたいとこの頃思う。 恋愛がとにかく下手くそだったアイツに聞かせたい。 「……“恋に傷つきたくない    恋に気づくことがなければいい   愛は怖い 重すぎて持って歩けない   確かじゃない 掴めない    臆病になる 嫌われそうって考える”」      口遊むと侑が「うんうん」って頷く。 「ネガティブな歌詞だな。売れないよ?」 「違う違う、サビから大逆転するから。」 「傑らしいわ。つか、またトモダチのこと考えてる?なんていうんだっけ、そいつ。」 「ん?(さとる)。」 ポジティブなのかネガティブなのか。全然わかんない、掴めないやつだった。 でも思い出すのは、いつもヘラヘラ笑ってなんか楽しそうにピアノ弾いてなんでも歌ってるアイツで。 バンド組んで間もない頃、バンド名悩んでるって聡に言ったら 『“不時着眼鏡と皺加工”にしたら?』って、俺の服装と全体的な雰囲気を見て言ってきた。 『眼鏡と皺加工シャツ イコール傑だろ?』 って。 『不時着は?』 って聞けば、 『制御不能な感情(きもち)。バンドマンはそうであれよ。てか、お前の音楽がそもそも制御不能。傑って、ぶち上がってる時最強だから。』 なんてわけわかんないこと言ってまたヘラヘラ笑って。 「傑のトモダチは今、どこで何やってるわけ?」 「さあ、どこにいるかは知らない。音楽の先生だけど。」 「フルネームは?」 「初澤(はつさわ)(さとる)。」 「検索したら出てくんじゃない?」 「……聡は大学の頃コンクールで色々優勝してるから、そういうのはいっぱい出てくるよ。今、どこにいるかは、やっぱわかんないけど。」 といいつつも。Googleの検索バーにアイツの名前を打ち込んでみる。 侑が興味のままにマウスをいじって画面をスクロールする。
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