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「あんまりウロウロしない方がいいよ、傑。」
俺たちは4人組。
こういう時、注意してくるのはギターボーカルの侑。
ベースの斎は、楽屋でいつもパズルゲームをしている。
ドラムの透は、ギリギリまでステージにいる。
俺はボーカルキーボード。ライブ前楽屋とロビーを行き来してる。
「大丈夫だろ。別に。俺の顔なんか誰も見てないんだから。」
事実、今までロビーをウロウロしていて気づかれたことは1度もない。
アイツはいつも、ライブに誘っても来るとも来ないとも返事をしてくれなかった。
それでいて、会場には差し入れを持ってきてライブは最後まで楽しんで行くのだ。
だから、開演前ギリギリまでロビーにいてアイツが来たのを確認するのが俺のルーティンだった。全国を回るようになってもそれは変わらず。
来るはずのない場所でも、アイツを探してしまう。
きょうも、別に連絡もしていないから。
来るはずなんてないんだけど。チケットだって買ってくれてる保証もないんだけど。
でも、俺のルーティンは必ず俺にいい出会いをさせてくれる。あの高校生カップルができるだけ前の列にいることを願う。
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