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「なっ、なんだ!」
同時に辺りの明かりが消える。
「停電だっ。ひとまず落ち着け」
「持ってるライト点けろ、急げっ!」
こういうときは「不用意に動いてはいけない」と、初めに土橋課長が言っていた。短く深呼吸をしてから肩口に付いている携帯用ライトを外し、点灯させる。
「班長は土橋課長に連絡っ!」
「ああ、誰も持ち場絶対に離れんなよっ!」
耳をすます。無線は途切れていない。班長の笠原が「通用口付近の廊下、停電です」と無線で繰り返し報告をしている。
『ぐわあっ!』
『なっ、何だこれはッ』
『い、E班ですっ、こちらに煙幕が……ゴハゴハッ! 突ぜ――がっ……みえ、……ねがッ……ちょおお!』
『E班! どうしたE班っ!』
『土橋課長っ! D班二名突然倒れま――どわあっ!』
『このッ、何者――』
ドタドタバタバタと激しい物音が、無線を通して館内に響き渡る。明かりは点かない。下手に身動きが取れないのが歯痒い。
『D班E班?! 応答しろ! 課長ダメっス、音聴こえなくなりました』
『クソ、いつの間に。かたゆでたまごめぇっ!』
都築巡査の焦燥感ある声と、土橋課長の悔しそうな一声。
『動ける者は出入口を塞げ! セキュリティ班はなにをやっとるか! まずはなんとかして館内の明かりを点けろ!』
『こちらセキュリティ班ッ。ダメです、予備電源もつきません。断線が予測されます』
『こちらF班。展示室及び対象物へ応援に向かいますか?』
『いや、F班の二名はE班の応援へ向かってくれ。あと動けるのは?』
指示の都築巡査の声は、先程よりも落ち着きを取り戻していた。笠原が間髪容れず返事をする。
「C班動けますッ」
『ではC班も同様、うち二名でD班の応援へ!』
「だそうだ。俺は班長だからここに残る。……じゃあ小山内と外川、行ってくれるか」
わかった、と首肯で了承し、同期で西署配属の小山内と共にD班の元へと走ることになった。
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