1st.タイムスリップ

1/1
前へ
/5ページ
次へ

1st.タイムスリップ

まぁ……そうだよなぁ、そうなるよなぁ。 今から20年前? 昔話にもなる年月ってもんだ。 俺も立派に老けたぜ。 ガタンゴトン、ガタンゴトン 電車に揺られながら、近くに立つ小集団が持つ紙袋に目を向ける。そこに描かれたケモ耳の少年少女のイラストに微笑んだ。 彼らは同人誌の即売会からの帰りなのだろう。満ち足りた顔をしながら、小声でも伝わる楽しげな会話を交わしている。 今の車窓に映る"おじさん"は紛れもなく俺。 当時の車窓に映っていたのは"キャラクター"の名残りを仄めかした俺。 ーー懐かしいな。 20年前は、目の前の小集団と同じく宝物の入った紙袋を下げて電車に揺られていた。朝早くから夕方近くまで、大好きなアニメや漫画の2次創作を求めて即売会やイベントに参加していたのだ。 ーーこんなおじさんが!? て、思うよな。 白髪が少し混ざる髪に肉付きの薄い頬、張りの少ない肌に、もしかしたらの加齢臭。 自重気味に口元を綻ばせながら、吊り革に体重を乗せて目を閉じた。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加