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第4話2人の道
5月の終わり。放課後、茉理子は校舎の2階の廊下でケンジとばったり会った。
ケンジは元バスケ部主将で、全国大会で優勝した経験を持っている。また、彼は悟の友人でもある。
「茉理子じゃん。久しぶり。お疲れ〜♪」
エナメル生地の大きなバックを持ちながら、ケンジはそう話してきた。
「久しぶり、ケンジくん。お疲れ〜。これから部活?」
「そうだよ。悟が図書室で茉理子のこと待ってるってさ。行ってあげてよ。じゃあまたね!」
彼は白のタンクトップに学校指定の紺の半ズボン姿で颯爽と茉理子の横を通りすぎて行った。
茉理子は渡り廊下を通って図書室へ向かった。
図書室には悟しか居ない。
ドアを開けると、何やら読書をしている悟がこちらに振り向いた。
「待ってたよ」
「どのくらい待ってたの?」
「10分くらい」
「待たせてごめん」
「とにかく座ってよ」
「うん」
茉理子は悟と向かい合って椅子に座った。
ちょうど窓が見える席だ。
空はまだ明るいほうだ。
しかし図書室の照明はついたままだ。
「もう一度聞く。俺たち、付き合わないか?」
悟の視線は真っ直ぐ茉理子に向いている。
茉理子は俯いたままだ。
すうっと息を吸って、茉理子は答える。
「高校卒業したら良いよ」
悟はきょとんとした表情をしている。
「それまでは?」
「今までどおりで」
「茉理子の気持ちはわかった。帰ろうぜ」
「そうだね」
2人は荷物を持って下校した。
途中まで一緒に帰る。
「じゃあ、また明日な」
「また明日ね」
2人は道の途中で別れた。
寝る前になって、茉理子はふと、今日の悟は自分の気持ちをやっと理解してくれたんだと思った。
卒業式が近づいてきた頃、茉理子は文系の大学へ、悟は理系の大学へ進路が決まっていた。
それぞれ別の大学だが、距離的には近いので、帰りに会うことは可能だ。
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