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第2話 茉理子視点
翌日の放課後、掃除が終わった教室で私は悟くんに声をかけられた。
「茉理子、今日は図書委員会だぞ」
忘れていた。今日は委員会があるのか。
「先に行ってて」
周囲の女子生徒の視線に気まずくなり、つい、言ってしまった。
本当は一緒に行きたいのに。
「わかった。遅れるなよ」
「わかってる」
やっと女子からの視線から開放された。
悟くんは、転校する前から女子に人気があり、告白された経験があるという噂まであるぐらいだ。
私なんて愛想もない地味な女子には遠い存在だったが、昨日からは少し近づいた気がする。
まぁ、あくまでも気がするだけなのだが。
図書委員会を終えると、私は足早に自分のクラスの教室に戻り、帰る用意を済ませてから窓辺に立ち、窓の向こうの空を見上げた。
曇り空ではあったものの、ずっとこうしていたいと、何となく思ってしまったのだ。
十分くらい窓の外の空を見上げていたところで人の気配がした。
「まだ、帰らないのか?」
悟くんの声だ。
「もう帰るよ」
私は悟くんに振り向いた。
「昨日泣いてた理由、わかったんだ」
「じゃあ、どうして泣いていたんだ?」
「この学校で唯一親友だった棗が転校しちゃって、その寂しさと孤独感にこころが押しつぶされて」
悟くんが驚いた表情をした。
「あいつ、俺がいない間に転校しちまったのか!?」
「そうだよ。ねぇ、もう教室には私たち以外誰も残ってないんだから、一緒に帰ろう?」
悟くんは頷く。
「良いよ」
私と悟くんは一緒に下校した。
「もうすぐ茉理子の誕生日だけど、何欲しい?」
悟くんは私の誕生日を覚えていてくれたらしい。
何だかキュンとしてしまった。
この感情は何だろう?
今までに味わったことのない、初めての感情だ。
なんて、そんなこと思っている場合じゃない。
「何か私に似合う物が良いな」
「そうか。考えてチョイスする」
「ありがとう」
帰宅後、ガラケーでLINEを見たが、今日は悟くんからのメッセージはなかった。
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