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後ろからの不良の圧が凄すぎる。こんなにも「早くしろ」と言わんばかりのオーラを感じたのは初めてだ。
さすがにここまで来ると警察は住宅街に来ないだろうな。公園方面が明らかに怪しい。こんな静かな所に来ないよな。
ぶつぶつの心の中で不安を流していると、本当にあっという間で家の前までついてしまった。逆に早歩きをしたらこんなに早く着くのかと新しい発見だ。
そして背後の不良は全然息切れしてないのに若干脇腹が痛いな。運動不足を感じる。何この差。
「此処、ですけど」
「…へー」
男は黒い何かを手に持っていて、それを躊躇なく開けていて、その光景に目を見開いてしまった。
「…えっ!ちょっ!いつの間に!」
「おっと、何をそんな焦ってんだ?何か見られてもまずいものでもある?」
家の前は街灯があり、さっきよりも男の表情が読み取れる。
後ろポケットにいつも入れていた黒い財布は無かった。いつの間に取られたんだろうか。走っている時?でも全然気づかなかった。最悪だ。人生初のカツアゲだ。そんなの焦るに決まってる。
男が手に取った財布を咄嗟に伸ばして奪おうとするが勿論避けられる。
「学生証っと。お、アンタ俺と同じじゃん。西高か」
西高とは通っている西野間(にしのま)高校の事だ。こんな不良のような生徒が居たなんで知らなかった。
男がした事をどう証拠を残せば警察に被害届出せるのだろうか、などと考え始めた。
「…さっき金使ったので無いですよ」
そう呆れながら呟くと、男は何やら学生証と俺を見比べて家の玄関の表札を何度か見返していた。そしてポカンとした顔をして周りを見回して、急に下を向くと少し小刻みに震えている。
「…っぷっ、あっはは!」
場違いな雰囲気に弾けるような笑いが響いた。
えっ、なに怖い。そんなに学生証に面白い事が書かれてましたか?それとも俺の顔見て笑った?傷を更に抉る気か?
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