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部屋一面が赤だった。紅、絳、朱、赫、真っ赤っ赤。
だけど僕の顔は真っ青。自分の顔から体温が引いていくのを感じた。
部屋の真ん中には、僕とおそろいの服を着て、部屋とおんなじ色になって倒れているお父様。この赤はお父様から出ているものだ。
まるで、お父様の胸の、心臓の部分に花が咲いているよう。
「お父…様?どうして?ねぇ…嘘だって言ってよ!僕知ってるもん!お父様は神様だから死なないんだって!お祖母様から聞いたもの!なのになんで、なんでなんでなんでなんで!!!」
信じられない僕は何度も何度もその場で叫んだ。
お父様の近くに駆け寄ったけれど、地面の赤がぬるぬるしていて転んでしまう。起き上がってお父様に近づいた。血が乾いていないということはそれ程時間が経っていないということ。
でも、もう、息をしていなかった。僕のかすかな希望は消え去った。
その場に崩れ落ちた。赤がべっとりと服に染み込んだ。これで僕も真っ赤っ赤。
「お父様…おいていかないでよぉ。僕を一人にしないでよぉ…うぅ…
ひっく…」
僕の目からこぼれ落ちた透明な涙が地面に触れ、真っ赤に染まった。僕とお父様の近くには小さくて細長い、銀色のギラギラしたものがたくさん落ちていた。きっとこれがお父様を貫いたのだろう。
「人間なんて、消えちゃえばいいんだ…自分たちの生活を支えてくれている神々を忘れ、気に食わない事があれば都合よく神のせいにし、挙句の果て…殺す?」
ふつふつと怒りが湧いてきた。でも、僕は何もすることができない。そうだ、全部僕のせいなんだ。
お父様は僕のために現世で働いて、殺された。そう、僕がいなければこんなことにはならなかったの…
でも、僕がいなかったらお父様は悲しむよね。今まで見放さずに愛して
くれた…じゃあ僕はお父様が愛している人のせいにしたのね。結局人間としてることは同じなんだ。
ふと、壁の写真が目に入った。
あぁ、懐かしいな。僕は仰向けになって写真を眺めた。
寝っ転がった衝撃で、周りの赤がぴちゃりと音を立てながら四方向へ飛び散る。
一番上のは、お父様とおそろいの服をもらって喜んでいた時の写真…箪笥の上には僕が今よりももっと小さいときに描いたお父様と僕の絵がおいてある。
その上に飾ってある写真は銀色のやつが当たったのか、表面のガラスが割れていてよくわからない。
その上には…下の方が赤に染まったおくるみに巻かれた赤ん坊の僕の写真。
どうして赤くなってるんだっけ?
もう何も考えられない脳を回転させて、僕は考えた。
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