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③
「ありがとうございます」
礼を言った男は申し訳なさそうに言った。
(何だこの感じは?)
キュンとした訳ではないが、なにか惹き付けられた。美月にとって初めての感覚だった。
もう一度確かめたい。
でも……目があったら「何だ?」と思われるかとしれない。美月はそのまま下を向いて足元を見るしかなかった。ターミナルに着くとバスを降りた男性は駅へ向かうエスカレーターを上がっていった。美月も後ろに続き男性の後ろ姿を見ながらエスカレーターを登った。
あれって何だったんだろう? 芸能人を見てカッコいいという感覚とは違う。凄く気になった。
しかし、きっと明日には忘れてるんだろうなと思った。
電車がホームに入ってきて扉が開いた。降りてくる人と乗る人で一気にホームはごっちゃがえした。人混みのすき間からあの男性が隣の車両に乗るのが見えた。
「あの人も同じ方向なんだ」
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