【2】恋のピースがはまらない

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④  女性専用車両に乗った美月は去年の夏を思い出した。その時は女性専用車両でなく男性と同じ車両に乗っていたのだが、つり革を持って立っていると下の方から視線を感じる。目線を下げていくと頭のてっぺんが薄くなった眼鏡のおじさんがこっちを見ていた。おじさんはじっと私を見たままで目が合ってもこっちを見たままで「きもっ」と思った私は慌てて目線を戻した。  次の駅で席が空いて座れたのはよかったがキモいおじさんが前に座って私を見ていた。そんなに堂々とみる? 痴漢か? 気持ち悪くなって隣の車両に移ったことがあった。それからは電車に乗るときは女性専用車両にしている。  美月は品川駅の高輪口から出ると、すぐ近くのホテルの裏口へ回った。扉を開けて中に入るとすれ違う人に挨拶をする。  美月は国内外のVIP も宿泊するシティホテルのフロントで受付をしている。勤務時間は早番は9時~18時。遅番は16時~24時。夜勤は24時~9時の当番制になっている。今日は早番なので久しぶりに友達とのご飯を楽しみにしていた。
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