【2】恋のピースがはまらない

6/6

16人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
⑥  今朝は目覚ましがなる前に目が覚めた。彼のことはすぐに忘れるかなと思ったが3日経っても頭から離れなかった。昨夜は、会えるか会えないか当てにならない期待で心が踊っている自分が意外だった。いつもより時間の掛かった化粧が終わり、鏡の前で何着も服を合わせ、玄関の扉を開けると雲ひとつない晴天だった。歩きながら時計を確認すると3日前と同じ時間のバスに乗った。  今朝も後方に座った。バス停の度に前方から乗ってきた人を気にするがあの人はどこからも乗ってこなかった。バスは駅のロータリーに到着するともう一度見落としていないか探すがやっぱりいない。改札を通過しホームに降りる階段であの人を気にするが今日はあの人はいなかった。 (やっぱりいないか…)  会えないと、余計に会いたくなるのが人っていうもんだ。彼氏でなければ友達でもない。ましてや偶然一回会っただけのあの人にこんなに惹かれている自分がおかしいのではと考えてしまう。 (ドラマだったら再会するんだけどなー)  普段見ないドラマなんて見ないくせにこんな時だけ想像する。  今朝も車内は通勤する人で溢れている。 「やっぱり朝番は最悪…」  人の波に流され今朝も仕事へ向かった。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加