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【2】恋のピースがはまらない
①
~数日前~
バス停へ向かう雨宮美月は、未明から降り始めた雨のせいで気分が乗らなかった。
「あっ、携帯!」
雨の音で目が覚めた美月は、夕方の天気を確認するのに鞄から携帯を出して見た後、鞄に入れ直した記憶がない。慌てて鞄のファスナーを引っ張るが傘をさしているせいで手間取った。
「もぉ、、、あぁー、やっぱりない…… 雨のせいだわ」
今夜は友達とご飯の約束があって仕事が終わったらメールすることになっていた。携帯を忘れたのを雨のせいにしてクルっとUターンすると急いで引き返した。
左手の時計に目をやると、今から取りに戻ってから出社しても十分間に合う。
美月は雨が強くなるなか携帯を取りに引き返した。出直してバス停に着くと待っている人は1人も居なかった。びっしょり濡れた時刻表を見ると2分前にバスは行ったところだった。
「さっき行ったばかりか。今日はついてないなぁ」
雨脚が強くなると、美月の真っ赤な傘の先から滝のように雨粒が流れ落ちてきた。
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