【2】恋のピースがはまらない

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②  雨音は風の強弱で音が変わった。その音が一定のリズムで変わっていくと、美月はそのリズムに合わせて小声で歌い出した。誰かの曲でなく思いついた歌詞とメロディで。 「私、作曲できるかも 笑」  さっきまで今日はついていないと嘆いていたのに、そんな冗談が出るくらい機嫌は直っていた。その時、後ろに人がやってきて歌うのをやめた。  10分程待っているとバスが近付いてくるのが見えた。目の前で止まったバスに乗ると後ろの方の1つ空いていた席に座ることにした。  何ヵ所か停留所を過ぎて、あと5分で鶴見駅に到着する時だった。『キー』っと音をたてて急ブレーキが掛かった。前でつり革やめた手すりを持って立っていた人達が揺れた時、雨で濡れた1本の黒い傘が、せっかくのお出かけ用のパンツに倒れてきた。 「もぉー」と、言いたいところを我慢して顔をあげると笑顔で「どうぞ」と傘を渡す。
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