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【01】
気乗りしないルーティンほど
嫌なものは無い。
放課後、安立清久[あだち きよひさ]は
図書室のカウンターに回り込み、席につく。
図書委員を長く務めている彼にとって
ココは職場だ。
そして
いつもと同じくカバンに手を伸ばす。
『数学ノート 2年C組 安立清久』
こっちじゃない。
清久は小さく舌打ちしながら
別のノートを取り出した。
『数学ノート 2年A組 五十嵐梨花』
その時、カウンターの前に人が現れる。
茶色く染めた髪にカラフルなヘアピン、
短く詰めたスカート。
「キヨ〜!アレ持ってきた〜? 」
五十嵐梨花[いがらし りか]。
見た目明らかギャルな彼女は
先ほど出した数学ノートの持ち主である。
「……ほらよ」
梨花はノートを開くと嬉しそうに眺める。
そりゃ嬉しいだろう、
彼女の苦手な数学の宿題が
完璧に済ませられているのだから。
梨花と清久は
小学生の頃からの幼馴染である。
派手な彼女と地味めな自分。
中学生の頃には
付き合うメンバーに隔たりが生まれ
接点はほとんど無くなっていた。
あの言葉を聞くまでは。
──ねぇねぇ、コレ見て?
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