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虚空を見つめようとしたその時、
カウンターに人影が現れる。
「おまたせ~、宿題終わった〜? 」
梨花……!?
ハッと窓の外を見ると
補講の教室の電気が消えていた。
暗証番号への思考に夢中になっていて
監視を怠ってしまったらしい。
「ね〜え〜、
まだ終わってないの〜? 」
「いや、終わったけど……」
予想外の事態によって
清久は完全に受動的になってしまう。
いつの間にか、数学ノートは
彼女の手に渡っていた。
「サンキュー!
今日も芹沢センセは快調だね〜」
「その呼び方やめろよな……」
ツッコみながらも
清久の脳内では緊急事態を告げている。
まずい、
このままロッカールームへ行ったら
梨花と筒井が遭遇してしまう。
「なあ、梨花……」
「ん? 」
引き留める為だけに呼んだが
内容までは考え至ってなかった。
清久は乾いた唇を舐める。
「なに?
やっぱりまだ宿題終わっ……」
「何でオレの漫画ずっと持ってんだ? 」
苦し紛れの質問。
しかし、意外にも
梨花は笑ったりしなかった。
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