Chapter.1

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真面目な顔になり、天を仰ぐ。 「アンタの絵が好きだった、 って言ったら? 」 「え? 」 「なんちゃって! 本気にしちゃった? 」 梨花はいつもの笑顔に戻った。 “アンタの絵が好きだった” 不意に清久の中に昔の光景が浮かぶ。 ──ねえねえ、これ見て? ──わぁ!キヨ、絵が上手〜! 梨花がノートを見せてきたセリフは 小学生の自分が良く 発していたものだったのだ。 清久は何か絵を描く度に 彼女に見せていた。 思考が過去に戻っている間に 気づけば梨花は居なくなっていた。 その時、胸元のスマホから声がする。 《先輩!先輩ってば! 》 筒井…… しまった、梨花を手放した。 清久は小声で怒鳴る。 「今すぐロッカーを離れろ! 計画は延期、また今度にしよう」 《…………》 無言。 沈黙を了解の証と思ったが 不意にスマホから声がした。 《……いいえ》 「え?」 《今やり抜きます、 “弱み”を利用する人間を私は許せません》 「筒井……」 《先輩も諦めないで》 清久は拳を握った。 もう伸るか反るか。
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