Chapter.1

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「まぁ、オレは気にしてないから」 「そういう問題じゃありません! そもそも宿題は自分でやるべきです」 いつも大人しい彼女が 今日はいつもよりしつこい。 清久は大きなため息をついた。 「仕方ないんだ、 “弱み”を握られてるから」 「“芹沢センセ”の事ですか? 」 急に核心を突かれ、思わず動揺する。 筒井は瞳は真っ直ぐこちらへ向けている。 彼女なら言い触らしたりしないだろう。 清久はため息混じりに話した。 中学生の頃、清久は漫画家に憧れていた。 その勢いで大学ノートに描いた 処女作『エンジェル・ゲート』。 トーンはおろか ペン入れさえされていない“粗悪品”を 清久は大傑作と信じて疑わなかった。 いま思えば、あんな強い能力の主人公が 何故かパーティを追い出されたり、 物語のキーとなる“ゲート”が たった4桁程度の暗証番号で開いたり、と 矛盾だらけな設定だったが 当時は完璧だと思っていた。 自分のペンネーム、 “芹沢蓮司[せりざわ れんじ]”が 世間を轟かせると本気で思っていた。 高校生になって すっかり忘れていたそれを 本棚の奥から見つけるまでは。 こんな“爆弾”を いつまでも抱えている訳にはいかない。 それはゴミ処理場で 焼却されている筈だった。
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