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「まぁ、オレは気にしてないから」
「そういう問題じゃありません!
そもそも宿題は自分でやるべきです」
いつも大人しい彼女が
今日はいつもよりしつこい。
清久は大きなため息をついた。
「仕方ないんだ、
“弱み”を握られてるから」
「“芹沢センセ”の事ですか? 」
急に核心を突かれ、思わず動揺する。
筒井は瞳は真っ直ぐこちらへ向けている。
彼女なら言い触らしたりしないだろう。
清久はため息混じりに話した。
中学生の頃、清久は漫画家に憧れていた。
その勢いで大学ノートに描いた
処女作『エンジェル・ゲート』。
トーンはおろか
ペン入れさえされていない“粗悪品”を
清久は大傑作と信じて疑わなかった。
いま思えば、あんな強い能力の主人公が
何故かパーティを追い出されたり、
物語のキーとなる“ゲート”が
たった4桁程度の暗証番号で開いたり、と
矛盾だらけな設定だったが
当時は完璧だと思っていた。
自分のペンネーム、
“芹沢蓮司[せりざわ れんじ]”が
世間を轟かせると本気で思っていた。
高校生になって
すっかり忘れていたそれを
本棚の奥から見つけるまでは。
こんな“爆弾”を
いつまでも抱えている訳にはいかない。
それはゴミ処理場で
焼却されている筈だった。
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