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「その“黒”、白くしてやりません? 」
「え? 」
「そんなノート、始末しましょうよ 」
「そりゃそうしたいけど……」
「私にも先輩の気持ちは分かるんです」
「え……? 」
「私もネット上で小説を書いてまして
一回、
アカウントが同級生にバレた事があります」
筒井は膝の上でこぶしを握る。
「周りからからかわれて
馬鹿にしてくる娘も居ました。
恥ずかしかった、悔しかった、
あんな思い二度としたくない……」
彼女の瞳が揺れながらこちらへ向いた。
「だから先輩を助けたいんです、私」
「筒井……」
清久の胸で温かいものがこみ上げていた。
「でも、すぐにとは行きません。
出来る限り協力しますよ」
「ありがとう……」
彼女もまた
同じ痛みを知ってる者だと分かり
仲間意識が湧いていた。
それだけで嬉しかった。
筒井は立ち上がる。
「じゃ、私は書架の整理に行ってきますね」
「あぁ……」
カウンターから数歩離れたところで
立ち止まり、こちらを向いた。
「……稲妻奏[いなずま かなで]」
「え? 」
「私のペンネーム。
今でも書いてるんですよ、実は」
笑顔で告げると、
スキップの様な足取りで離れていった。
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