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《五十嵐先輩、3階まで移動。
どこへ行くんですかね……? 》
「うーん……」
清久は虚空を見つめる。
「自分のクラスじゃないかな、
忘れ物かもしれない」
《あ、ホントだ!
教室へ入って行きましたよ》
梨花は自分の机から巾着袋を取ると
そのまま教室を出て来たらしい。
カバンを開いていないので
彼女はまだノートを持っている。
《今度は下り始めました》
ココで清久は嫌な予想が立つ。
もしかして
梨花はこのまま帰る気だろうか……
『エンジェル・ゲート』は普段、
家に保管していて
水曜日のこの時だけ持って来る。
そんな鉄壁の防御を敷いていたら
手を出すのがかなり難しい。
しかし、筒井の声が希望を生んだ。
《階段を降りた後は右に移動。どうぞ〜》
この高校の昇降口は
階段降りて直進した先にある。
直帰では無いらしい。
《五十嵐先輩、学生ロッカーに移動。
あ、カバンを開いてます! 》
学生ロッカーとは、
個人ロッカ―の集まったスペースで
学生一人につき一つ割り当てられている。
そこに保管してくれているなら
可能性が生まれる。
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