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大作戦
「さあ、今度こそうまくいってよ」
最後の材料で最後の型を抜き終わると、隠し味にレシピにはないアーモンドの香りをつけてクッキーをオーブンに入れる。オーブンの温度は百八十度。時間はオーブンがすでに温まっていることを考慮してちょっと短めの十二分に設定する。
お願い、四度目の正直。上手にできて。
願いをこめること十二分。まぬけな声でオーブンが鳴いた。恐るおそる扉を開ける。トレイを引っ張り出すとそこには黄金色に輝く星型のクッキーが並べられていた。
「やった!」
変な匂いもしていない。さっきのオープンモンスターとはまるで違う正真正銘のバタークッキーができあがっていた。私は、とくにできのいいものを三つほど選んでラッピングした。最後にダメ押しで隠し味の香りをプラス。ローストまえのアーモンドの香りがバターに混ざる。
「これでよし」
私は残りのクッキーをゴミ箱に捨ててキッチンの電気を消した。明日はいよいよ、勝負のときだ。彼は私の気持ちに気づいていない。勇気を出して、私の想いを伝えるんだ。
翌日の夕方、私と先輩は先輩のアパートがある駅の近くの居酒屋で食事をした。
「かんぱーい」
ジョッキをこつんとぶつけて、ドリンクを体内に流しこむ。先輩はビールで私は烏龍茶。先輩は「お酒を飲みなよ」と言ってきたが、しっかり断った。未成年が覚悟も決めず簡単に犯罪に手を染めるわけにはいかない。どこに入ったかわからないけど、なんとなく満腹感を得られる食事をとる作業に入る。もうこれ以上食べられないと思っているころ、ほろ酔いの先輩が提案する。
「比奈ちゃん、これからおれの家にこない?」
「え、でも……」
内心ガッツポーズをしていたが、口では逆を言ってしまう。
「いいから、いいから。大学で使う教科書とか必要なものがあったらあげたいしさ」
そんなふうに言うから私はOKを出した。でも、私、今日、可愛い下着、つけてきてないんだけどな。
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