黒鍵に委ねて

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中学卒業まであと5日。 だと言うのに桜はまだ咲いていない。 あの凍えるような冬と高校受験を乗り越え私は今ピアノの前いる。 同級生の大半はまだ高校受験を終えていない。 あと3日で終わるらしい。 私立志願の私はみんなを応援することしかできない。 そして、受験がいち早く終わりを告げた私は重大な任務を任されていた。 それは卒業式で歌う曲のピアノ伴奏だ。 私は別にピアノが嫌いというわけではない。 寧ろ好きだ。 だが、人前で演奏というのは話が違う。 本番と人前に弱い私は卒業式の練習なるものでもミスを連発していた。 そのたびに練習ではうまく弾けていたのにともどかしい思いをしている。 友人からも応援されているが一部からは私のピアノのミスの連発具合に視点を向けている声も聞こえる。 恐らく今受験と闘っている子の中にもそうでない子の中にも自分が弾きたかったと思っている子はいるのだろう。 私はオーディションで伴奏者という立ち位置を勝ち取ったのだから。 恥ずかしい。 これではオーディションを受けた他の子たちに顔向けできない。 好きだという理由のみで卒業式のピアノのオーディションを受けてしまったことをひどく後悔している。 残り5日しかない私は練習のために体育館のピアノの元へと足を進める。 なぜだが足に鉛のついている感覚を覚えた。
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