黒鍵に委ねて

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美しく優しい心地の良い旋律が脳裏に伝う。 やっぱりお姉ちゃんのピアノに似ている。 記憶が鮮明に蘇る。 『有彩』 ひどく優しくそう呼ばれた気がした。 かつて耳に馴染みすぎた声。 ふとピアノの方を向く。 座っているのはほかならぬ麻里ちゃんだ。 けど、どうしてもお姉ちゃんに重ねてしまう。 一緒に歌って弾いて……それで……。 ねぇお姉ちゃん。 私は今年でもう、お姉ちゃんと同い年になっちゃった。 私はお姉ちゃんの分まで生きるよ。 まだこの時が終わらないでほしい。 だからこそわたしは 黒鍵()に身を委ねるのだろう。
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