初恋が生まれた日

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 千歳のプレゼントを買いに、ショッピングモールへやってきた。  迷いに迷ったけど、マフラーは寒い時期限定になってしまうので、年中(ねんじゅう)してもらえるピアスにすることにした。  角度を変えると多彩な色に変わる石のピアス。  千歳とあらかじめ予算を決めているので、それに収まる金額で。  本屋にも寄って好きな作家の小説を買い、コーヒーショップで一休みをしつつ、手提げ袋の中の赤い包み紙をみるたび、顔が綻んでしまう。  千歳は、喜んでくれるだろうか。  この気持ちに名前を付けてしまったあの日から、ソワソワと落ち着かない日々を過ごしているけど、たぶん千歳にはこの気持ちはバレていない。  もともと彼は、人の気持ちにちょっと鈍感っぽいところがある。  夏頃に教室の隅で泣いていた女子に向かって、へらりと笑いながら「何泣いてんだ、元気出せよ!」と肩を叩いていた。  その女子はずっと付き合っていた彼氏にフラれて傷心していたのは誰の目にもわかっていたのに、千歳は特攻のごとく、物怖じせず自爆しに行ったのだ。    そんなことをしても皆に愛される千歳が羨ましくもあり、(うと)ましいと感じることもある。  相変わらず千歳は、風呂に入る時に自分の目の前で全裸になろうとする。それはもちろん、自分など眼中にないという気持ちの表れなわけで。  少しくらい恥じらってくれてもいいのにと、ひとりよがりになる。  そして目を閉じれば、千歳の引き締まった体と精悍な顔つきが瞼の裏に浮かんでしまう自分。あぁ、なんて滑稽。  店から出て少し歩いたところで、見知った顔の人と目が合った。  高一の頃、同じ委員会だった女の子。  佐久間さんといったっけ。気付いた向こうも、気さくに話しかけてくる。 「創くん。久しぶり」 「うん。久しぶりだね」  同じ高校には通っているけど、佐久間さんとはクラスも校舎も違うので全く顔を合わせない。会ったのは実に一年ぶり。  聞けば佐久間さんも、友人のプレゼントを探しにやってきたのだと言う。  佐久間さんは平均身長より背が低めの自分よりも小さくて、可愛くておとなしい。  本が好きなので共通の話題があり、人付き合いが苦手な俺でも、唯一緊張せずに話せる数少ない女子だった。
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