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擬音でどう表すか不明瞭な時計の音だけが響く。
その音がわたしは独りだということを再認識させた。
明日、世界は終わる。
終焉の世界を背景に人々は荒れ狂う。
街に広がる店に動きは見られなくなり閑散とする。
それはここ1ヶ月前からだ。
1年前。
突如世界の終焉が知らされたときからこうなることは決まっていたのだろうか。
死にたくないと嘆く者。
最後を楽しもうとする者。
テロを起こす者……
皆の生き方があの日から大きく枝分かれした。
多様な生き方……といえば響きはいいだろう。
だが、ここまで来ると私のように望みを捨て、諦める者が人口の多くを占める。
ここまで来て諦めないやつはよほどの馬鹿かここまでがんばって対策を練ってきた奴らだろう。
もしも明日世界が終わるなら何がしたい?
そう友人に問いかけていた頃が懐かしい。
当たり前の明日はもう来ないのだから。
書きかけの原稿用紙に目を落とす。
中途半端に終わった原稿。
原稿に書かれていたのは題名と、作者名……私のペンネームである花木亜沙美。そして、10ページ分ほどまでしか書かれていないお話。
1年前からの書く気にはなれなかった。
余裕の無い世の中。
私の作品を手に取ってくれる、私の作品に救われる人たちがいるとは到底思えない。
あの日から既に私は諦めていたのだ。
時計が0時を指す。
世界の終わりまで約24時間。
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