4人が本棚に入れています
本棚に追加
俺は日常的に暴力を受けていた。
親からだ。
学校から帰るたびに、殴られて、蹴られて、冷たいシャワーを浴びせられて、何時間かも分からないまま冬は寒く、夏は暑い押し入れに押し込まれた。
怒声も日常茶飯事だ。
そんな俺の味方なんていなかった……。
いや、いたにはいたんだ。
俺の兄だ。
俺の兄は俺と同じで虐待を受け続けていた。
兄と俺はたかだか2歳差。
でも、いつも俺を守ろうとクソ親の前に立ちはだかって正面から暴力を受けていた。
兄が18歳で、やっと家を出られるってなった時……俺に言ったんだ。
「一緒に逃げよう」って……。
兄曰く、本当は中学卒業と同時に家を出たかったらしいが、あくまで体裁を気にする両親は高校までは行かせたかったらしい。
俺たちの怪我がたいてい服に隠れるとこにあったのも、体裁を気にしてのことだろう。
そんなクソ親のところを逃げ出して俺は兄と二人でボロアパートを借りて住んだ。
兄は就職していたため、ある程度の収入が入った。
だが、俺はまだ高校生でバイトのできない公立高校に在籍しているため、金を稼ぐ事が出来なかった。
中退も考えたが、兄に「お前が本当に進みたい道に進め」と言われてしまった。
本当にいい兄だったよ。
家を出てから、兄は好きだった小説も買うのをやめて必死に働き生活をしていた。
貧乏生活でも、たのしかったんだ。
そして、俺も成人して……やっと兄に恩返しできるって思ってた。
働いて稼いだ金を貯めて、兄がずっと欲しがってた小説のシリーズを買ってあげたかったんだ。
……でも、世界の終わりが告げられてから……全てが変わった。
皆狂っていった。
そして、正気を保った人たちが狂人たちに食い殺されていった……。
テロが多発した時期……あっただろ?
俺の兄はそれに巻き込まれて死んだ。
なんの恩返しもできなかった。
絶望したよ。
なんで俺じゃなかったんだって……。
俺も連れてって欲しかった。
生きてるのなんて辛いだけだ。
だって、この世界は最早、地獄だろ?
生きてることに意味なんて感じられないんだから。
それで……今日、崩れた瓦礫に巻き込まれて……ああ、やっと死ねるんだって思ったんだけど……な?
最初のコメントを投稿しよう!