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「……まぁ、そんな感じだ」
「え〜……なんか、助けちゃってごめん」
「いや、それごめんって言われる筋合いはない。むしろ、こっちがありがとうって言わなきゃなんだよな」
「……にしても、親……クソだね」
「親とも呼びたくないな」
なんだが暗い話をしているのに心が安らぐ。
そういえば、虐待の話とか……人にしたことなかったな。
話すだけで、心は少し軽くなるみたいだ。
「死んで、兄に会ったら……恩返しできるかな?」
ひとりごとのように呟く。
いや、実際はひとりごとのつもりだった。
「……もう、恩返しはできてるんじゃないかな?」
「……なんでだ?」
恩返しは一度もできてない。
守られてばかりの弱い弟のままだったのだ。
それなのに……
「私が凪原君のお兄さんだったら、凪原君の存在ってとてもありがたいものだったと思うの」
「……守られてばかりだったのに?」
「うん。だって、ひとりじゃないって思えるから。凪原君はお兄さんがいたから虐待に耐えれたんでしょ?」
俺は無言で頷く。
なぜか言葉がでなかった。
「多分、お兄さんも同じだったと思う。お兄さんにとって、凪原君はお兄さんが生きるための原動力だったと思うよ?」
「……そうだったらいいけど……」
「人間、孤独を感じた瞬間が一番弱くなっちゃうからね〜。きっと二人はお互いのおかげで強くあれたんだよ。助け合えてたんだね〜」
助け合えてた……?
……そう思えたら、楽かもしれない。
兄にとって、俺が必要な存在であれたなら……。
「……ところで、花崎さんはどんな人生だったんだ?」
「え?私?」
「俺が話したんだから、次は花崎さんだろ。じゃんけんで順番も決めたしさ?」
次はこちらがニヤニヤした目で花崎さんを見る。
一方花崎さんは鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をしている。
「ん〜……平々凡々な人生だよ」
「もっと詳しく教えてくれてもいいじゃねえか」
花崎さんは渋々といった様子でため息をついた後、話しだした。
「私は……」
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